言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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1984

一九八四年 (ハヤカワepi文庫)

有名な小説なのでタイトルだけは知ってました。つい最近読んだので感想を残します。

1984 に影響を受けた様々な SF を読んだ事があるからか冒頭の「ビッグ・ブラザー」による監視社会の描写はちょっと退屈になってしまいましたが、うだつの上がらないインテリ中年主人公ウインストンがみんなで悪人を罵り合う Two Minutes Hates という面倒くさい会社イベントで突然後ろの女性が気になってしまい勝手に一人で感情をこじらせ憎悪する描写のオタク臭さには笑ってしまいました。

それから骨董品屋で手に入れた日記帳をこっそりしたためたり、突然目の前でわざとコケた女の子に告白されてエッチな展開になったり、非常に都合の良い展開だったので、これは前世紀のオタクの先祖が自分の願望を込め、共産主義が勝利した 1984 年の架空の世界で革命を起こしてスッキリする話だとばっかり思って読み進めていたら後半さっぱり違ったので驚きました。また色々読み取れなかった部分もありました。例えば:

We shall meet in the place where there is no darkness,

7年前にオブライアンがウインストンの夢の中で語り、ウインストンは彼に救われる事を夢想するかっこいいセリフです。現実ではウインストンがオブライアンに語り後で痛々しい皮肉な意味となるわけですが、オブライアンが7年間ウインストンを観察していた事から、単なる夢では無かったようにも思えます。

また

You are the last man, You are the guardian of the human spirit. You shall see yourself as you are.

と言われて拷問を解かれるシーンでは、色々あったが実は大逆転でハッピーエンドだと思いこんでしまったので(ネタバレ略)。

ウインストンの疑問:

"I understand HOW: I do not understand WHY"?

は結局よく私には理解出来ませんでした。ネット上に書評が山程あるので、しばらく暇つぶしになります。最終章の人工言語 Newspeak の解説は言語によって思考をどのようにコントロールするかという解説で勉強になりました。Newspeak をネタにするのは相当悪趣味だと分かったのも良かったです。サラリーマンって DOUBLETHINK の毎日です。

お風呂の練習

双子が生まれて以来、だいたいお風呂は僕が入れている。最初は妻にタオルを持って待機してもらい、洗面所にお湯を張って恐る恐るお人形さんのように一人ずつ洗った。洗面所に入り切らなくなるとお風呂にマットを敷いて洗い、歩けるようになるとようやく二人同時に入れる事が出来た。毎晩二人も同時に洗っていたので、我ながら上手になったと思う。湯船の底に足が付くまでは毎晩溺れないかとヒヤヒヤしていた。

そこからしばらく同じようにお風呂に入れていたが、もう小学一年生になった事だし、一ヶ月ほど前ついに自分で体を洗わせる事にした。喧嘩しないように体を洗うタオルと石鹸を2セット用意して、二人一緒に洗えるようにした。

最初はおそるおそる体をタオルで撫でたり、タオルで泡を作って遊ぶだけだったが、毎晩根気よくやっていると何となく最近は最後まで洗えるようになってきた。二人で一緒にお互いに声を掛け合ったり張り合ったり楽しそうに洗う。正直お風呂を教えるのは面倒くさい。今までなら三十分くらいで終わっていたお風呂が、のんびり遊びながら洗わせていると一時間くらいかかってしまう。僕がのぼせて先に上がってしまう事もある。

今はまだ放っておくとエンドレスで遊んでしまうが、近頃は「しあげ」と称して洗ってあげる手順も少なくなり、一緒にお風呂に入る機会もあと少しだろう。これで肩の荷が降りるような、寂しいような不思議な気分だ。

僕と双子のお風呂の練習はもうすぐ終わる。

娘の入院

去年手術した次女に続いて、長女も扁桃腺とアデノイドの摘出を行った。去年の術後の様子があまりのも可愛そうだったので僕はずっと手術に反対していたのだが、お医者さんに診断してもらうとやはり長女にも強く手術を奨められたので渋々妻に同意した。手術が近づくにつれ、一緒にお風呂に入っている時も寝る前に絵本を読んでいる時も麻酔から醒めずにこれが最期の別れになったらどうしようと嫌な感じが止まらなかった。

新型コロナの影響で面会は一日一人だけという制限があるのだが、手術当日だけは両親とも面会が許される。手術は朝の9時からだったので、早朝義母に次女を預け8時に東京都小児医療センターに到着した。病室に入ると幸いな事に同室に同じ年の女の子がいて症状も手術の日も同じだったので、すぐにお友達になって仲良くお絵かきをしていた。次女の入院の経験からとにかくお友達を作る事が入院生活で最も重要だと分かっていたので、妻が入院時にうまくお友達になるよう取り計らったらしい。

8:40頃看護師さんがやってきて「ぼやっとする薬」を飲ませてもらう。薬は注射器のような容器に入っていて長女はぎょっとするが飲み薬だ。苦いらしく長女は少し吐いてしまった。せっかく着せてもらった手術着が濡れたので着替えをする。薬を飲んだらベッドで安静にしないといけないのだが興奮してしまったので僕は絵本『くものすおやぶん とりものちょう』を読んで落ち着かせた。隣の子もやってきて一緒に聞いているうちに長女はぼんやりして来る。

その後時間通りにやってきたストレッチャーに乗せてエレベーターの所でしばらくのお別れとなった。

後は看護師さんに渡された携帯電話が鳴るまでやる事が無い。病院内のドトールで朝食を食べ、ローソンで昼食を調達する。ファミリールームで妻は前夜のオリンピック卓球ダブルスの映像を繰り返し観ている。僕は持参したキンドル を読もうと思ったが落ち着かない。

11時ごろに手術が終わったと連絡があった。病室の前で待っていると長女の泣き声が聞こえる。声を出すと痛いはずなのだが「痛い痛いママがいない」と繰り返し訴える。顔は青ざめ唇は震えている。とても可愛そうな状況だが、意識があるのでひとまずホッとした。若い担当医は僕たちに小さなアデノイドの破片と2つの大きな扁桃腺を見せ、「予定通り終わりました」と無愛想に告げた。

せっかく戻ったが病室で痛み止めの処置が終わる間はしばらく会えないので辛かった。病室の前で長女の泣き声だけを聞いていた。

看護師さんに三時間はベッドの上で安静にして下さいと指示される。次女の時は術後ぐったり朦朧としていたのだが、長女はのどが痛い、ベロが大きくて気持ち悪いと泣き続けた。あまりにも痛がるので看護師さんに別の痛み止めを処方してもらった。痛さを1から10で教えてと聞くとちゃんと「6くらい」と答えるのでびっくりした。ただ、せっかく持ってくれた痛み止めは苦いの嫌だと言って飲まなかった。その後僕が『ファーブル先生の昆虫教室』を読むとようやく寝た。それから何時間も起きなかった。

僕は次女のお迎えのために先に帰ったのだが、長女は夕食もちゃんと食べたらしい。次女の手術の後は瀕死の状態で可愛そうで見るに堪えなかったのだが、長女は大丈夫そうだ。まだ幼いのにこんなに痛い思いをさせて申し訳ないと思う。

アトリエ引越

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新名神から草津ジャンクションを経由して京都方面へ向かいながら、ノイズだらけのラジオの電波を適当に合わせる。

谷口キヨコだ!」

たった一人の運転席で、僕は思わず叫んだ。

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彼女のDJを聴くのは一体何年ぶりだろう。何日もの徹夜、ボール盤の木屑、鼻につく塗料。眠気眼で作品を運んだトラック、学生時代の記憶はいつも彼女のラジオと共にあった。あの頃と同じようにラジオを聴き、同じように2トントラックを運転して、今僕は自分の作品を迎えにゆく。まるでタイムマシンで20年前に遡ったような錯覚に陥りクラクラする。

大学から離れてから、諦めの悪い僕は摂津峡のふもとに倉庫を借りて自分の作品をそっと保存展示していた。馬鹿馬鹿しいと思いつつも作品を処分する気にはなれず家賃を払いながら彫刻作品制作を再開する日を夢見ていた。それから20年。ようやく今、自宅に作品を置くスペースを用意できた。さすがに巨大な作品をそのまま展示というわけには行かないが、とりあえず運んでしまおうと東京からはるばるレンタカーの慣れないトラックを運転してきたのだった。

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計画では、積み込みには二日かかると予想した。僕の作品の搬入出はいつも非常に簡単だった。たいていどんな展覧会でも搬出は2時間以内で終わった。だから二日の予想も自分ではかなり余裕を見たつもりだ。それがこんなに大変だとは。。。

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まずラジカセを鳴らす。SONY CDF-DW95MkII。これは高校生の頃初めてのアルバイトで手に入れた物かな。作業の開始に分解ずみの材木の積み込みから始めた。作業としては簡単だが、20年積もったホコリを落としながらの作業はなかなか大変だ。とにかくアトリエ内はホコリだらけなので屋外に少しずつ持ち込んで清掃するしか無い。清掃を怠ると自宅の仕事スペースがホコリだらけになるので、出来るだけ綺麗にしてから積み込みたい。また、早めに作業の見通しを立てたいと、四台ある棚の解体から始めるがこれが全然進まない。そして一日目はすぐに終わってしまった。

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二日目は終わるまで帰らないぞと覚悟を決める。まずは大型作品の一つ「独身育毛健康機械」の解体を進める。解体自体は簡単だが、脚立に乗ってる間に床が抜けて怖かった。また、やはりホコリの掃除に相当な時間を取られる。

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次に「ギロチン式健康機械」の解体。これも簡単なのだが解体順序を忘れていて手間取った。メモ: 木枠の解体時には首の枠を固定する M8 のボルトを最初に全部取り外す事。M8 は角材を交差する鉄板にもついている。実は引越先のアトリエの天井高は 2,400 mm しかないので、そのままでは「独身育毛健康機械」や「ギロチン式健康機械」は展示できない。キャスターを外せば何とかなるかなと思っていたのだが、「ギロチン式健康機械」の組み立て時には全体を横に倒す必要がある事が分かった。木枠と同時にベッド部分を組み立てる必要があるからだ。となるとさらに余裕の天井高が必要なので、組み立て方法を変更する必要がある。

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最後の大型作品「チャップリン式健康機械」を解体すると既に夜の十時近くになっていた。この日のうちに終わらせるつもりは満々だったが、小さい作品を積み込んだり棚の解体を続けてゆくうちにどんどん時間は溶け、頭はぼんやりし、明朝三時にスケジュールの完遂を断念した。

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とにかく横になったが、心配が沢山ありすぎて眠れない。スケジュールの延長は可能だろうか? 今日積んだ荷物は崩れないだろうか? 特に、底の方に置いてしまった濃硫酸は大丈夫だろうか? そう、やばいことになぜか若い頃硫酸を買ってしまい、処分方法が分からず放置していたのだった。

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翌朝レンタカー屋に電話すると、幸いな事に一日延長が可能だという。仕切り直しだ。落ち着いて考えよう。このままだと棚の解体に何時間もかかって無理だ。ホームセンターで M12 のラチェットとビットソケットを購入して再開。電動工具を使うと、棚一台 40 分程度で解体可能だ。これは速い。しかし雨が降ってきた。埃と土でドロドロになってしまう。やばい。崩れないように荷物も積み直さなくては。硫酸は怖いので運転席に置こう。と何度も挫けながらも積み込み作業を終えたのは夜八時だった。

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というわけで、翌朝眠い思いをして東京まで引き返し、自宅のアトリエに搬入が終わった頃はすっかり筋肉痛だった。長年の願いが叶い嬉しいはずだが、ちょっとしんど過ぎて何も考えられない。また、引越が終わっても本来の目的である作品の継続的な制作はこれからなので、喜ぶのはまだまだ早い。

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関連

How to Avoid a Climate Disaster: The Solutions We Have and the Breakthroughs We Need

How to Avoid a Climate Disaster: The Solutions We Have and the Breakthroughs We Need (English Edition)

ビル・ゲイツによる、地球温暖化対策についての本です。邦訳も夏頃に出るらしい。教科書のように整理してまとまっているので、現状と今後を知るのに便利です。特に大切と思われる項目をメモします。

  • 現在世界中で人類は 510 億トンのグリーンハウスガス(温室効果ガス)を排出している。
  • 温室効果ガスにはメタンのように二酸化炭素の 120 倍も温室効果が高い物もあるので、二酸化炭素に換算した数値を排出量とみなす。
  • 目標は、先進国が 2050 年までに温室効果ガスの放出を実質ゼロにして、発展途上国もそれに続く事。
  • グリーンプレミアム (温室効果割増金)
    • ある製品やサービスについて、温室効果ガス放出ゼロを達成するために追加で必要な費用の割合。
    • この本の中核となるアイデアで、目標達成までの困難度を測る指標。
    • 例えばジェット機の燃料として、石油で作った普通の燃料の代わりに温室効果を排出しないバイオ燃料を使うと燃料代が 140% 余分にかかるとする。この増えた分の 140 % がグリーンプレミアム。
    • 場合によってはグリーンプレミアムがマイナスになる。例えばオークランドでは天然ガス暖房よりも電気ヒートポンプの方が安い。
    • 温室効果ガスゼロを達成するには、グリーンプレミアムを出来るだけ下げるための技術革新が必要となる。
    • 温室効果ガスを排出しない代替物が存在しない場合、直接二酸化炭素回収 (Carbon Capturing) のコストを使ってグリーンプレミアムを計算する。例えばセメントの生産では原理的に二酸化炭素を排出するため、セメントを生産し続けるには二酸化炭素を回収するしか無い。
  • 温室効果ガスの発生源は多岐に渡っている。いくつか目処のつかない物もある。
    • セメント、鉄、プラスチックなどの生産: 31%
      • 特にセメントを生産するためにはどう頑張っても二酸化炭素が発生するので、画期的な技術革新が必要。
    • 発電: 27%
      • ソーラー、風力、原子力発電などを組み合わせて何とかする。大規模な充電技術が必要。
    • 農業、畜産: 19%
      • 牛肉の生産がやばい。ゲップからメタンが発生する他、餌の肥料の生産も大量の温室効果ガスを発生する。
    • 運輸: 16%
      • 出来るだけ電力を使う。電池が持たない長距離輸送には水素やバイオ燃料を使う。
    • 冷暖房: 7%
      • 出来るだけ電力を使う。寒い地域はヒートポンプが効かないので水素やバイオ燃料を使う。切り替えに時間がかかるのが難点。
  • 政府の役割
    • 企業にとってリスクの高い研究開発にもっと資金を出すべき。特に現在グリーンプレミアムの大きい分野では技術革新の効果が高い。
    • 政府は温室効果ガス削減に効果の高い製品を優先して調達するべき。

かつては地球温暖化の議論は本当に起こるかどうかという物でした。それが今日では具体的な回避策の議論に移っています。日々の生活に直接結びつく問題も多いです。気がつけば石油ストーブが消え代用肉を食べる日常になるでしょう。

この本の内容は、Breakthrough Energy というサイトでまとまっています: https://www.breakthroughenergy.org/

双子が小学生になる。

最近の毎日はこんな感じ。

  • 5:00 起床。平日だけ 8キロランニング。前は 11 キロ走っていたがやっぱり眠くて生活に支障が出るので減らした。
  • 6:30 グズグズ過ごす。新機種が出るかもという妙なタイミングで iPad mini5 をメルカリで買ったので、攻殻機動隊みたいなカラフルな漫画とか読む。
  • 7:00 子供を起こす。ゴミ捨て。洗濯物干し。
  • 8:00 - 10:00 妻が子供を出す。仕事のミーティングがあったり無かったりするので日によって違うが、グズグズ過ごす。
  • 10:00 - 12:00 仕事。休日は午前中に玄関掃除とトイレ掃除。
  • 12:00 - 13:00 昼食。コーンフレークやグラノーラ等のシリアルを食べる。Hulu で Halt and Catch Fire やふしぎの海のナディアを観る。もうすぐ終わるのでお勧めください。
  • 13:00 - 19:00 仕事。途中食材を買いに行ったり、気分転換に公園に行く。
  • 17:30 妻が子供を連れて帰る。
  • 19:00 - 20:00 風呂掃除。洗濯物たたみ。夕食。
  • 20:00 - 22:00 風呂と寝かしつけの絵本読み。ほぼ毎晩『ファーブル先生の昆虫教室』。最近は妻がやってくれる事もある。
  • 遅くても 23:00 には寝たい。

こないだ双子が幼稚園を卒業したのだが、私にとって年長さんの思い出はほぼ無かった。コロナのため色々な行事がキャンセルされたし、運動会より Maker Faire を優先してしまったので担任の先生の顔もろくに知らない状態で卒園式だった。申し訳ない。代わりと言っては何だが、毎日お家にいるお父さんなので自宅で子供と過ごす時間は増えた。特に喉の手術の後次女がナイーブになってしまった事もあり、夜はずっと双子と寝ることにしていた。最近ようやく双子が朝までぐっすり寝てくれるようになり、自分のベッドで寝られる。妻は腰が悪いので、週末遊びに連れて行くのも私の役目だ。親に似てインドア派で外で遊びたがらないのだが、足が遅いのが許せないので何とか連れ出している。

先月ようやく自転車を買って練習中だ。私の子供の頃はコマを付けて練習したが、最近はペダルを外して練習するものらしい。確かにコマがついてるとバランス感覚が養われないので合理的な気がする。本当はもっと早くストライダーを与えたかったが、双子の二台を同時に追いかける自信が無かったので遅くなってしまった。

自宅遊びは相変わらずお絵かきが主だが、通販を大量に使うようになって余ったダンボールの工作も結構激しい。ダンボールを部屋に見立て、本を置いたりタオルケットを敷いて居心地の良い空間を作っている。なのでダンボールを捨てるタイミングが難しい。

ピアノとバレエを習わせる事にした。バレエは近所の体育館で安く教えてくれる。運動が得意な方では無いので、楽しく体を動かす事を覚えてくれれば良いなと思う。ピアノの先生も近所で見つかった。特に長女がピアノに興味を持っていて、児童館で延々鳴らし続ける。私も子供の頃楽器が大好きで、学校のオルガンを飽きずにずっと触っていた。ピアノを習ってみたかったがそういう家庭では無かったので、子供にピアノを習わせる事が出来て嬉しい。

さて、いよいよ小学一年生だ。親の立場で学校に行くのは初めてだが、まるで学校は親を教育する場だ。提出書類や持ち物や、色々な予定がめちゃくちゃ面倒くさい。子供の頃から学校嫌いだったが、やっぱり大人になっても学校嫌いが再燃した。申し訳ない事に元児童会長の妻がほとんどやってくれてありがたい。

子育ては年々楽になっている。双子は放っておいても二人で遊んだり、一人で本を読んでくれるので親が付きっきりで付き合う事はあまり無い。逆に勝手にあっちこっち動くので面倒くさい事が増えた。例えば昔は歯磨きの時じっとしていられたが、最近はずっと動いているので歯磨きしづらい。ご飯の好き嫌いも増えたし、親の油断もあってこぼし方も激しくなった。

去年から自宅で過ごす事が多くなり「スマイルゼミ」という教材をやらせているのだが、前は素直に楽しんでいたのに特に長女は上手くいかなくなると癇癪を起こして泣いたりぐちゃぐちゃ書いたりする。そうなると手がつけられないので、落ち着くまで抱っこするしか無い。

あまりにも子供が言うこと聞かないと、言いづらいが僕もついイラっとしてしまい手を上げてしまう事もある。赤ん坊の頃はいくら理不尽な事が起こっても手を上げるほどイライラしなかったが、どういうわけか子供の自我がはっきりして来ると悪意が見える気がして親も我慢出来なくなる。子供には申し訳ないが、いつでも穏やかでいるのは難しい。

The Dispossessed / 邦訳『所有せざる人々』 Ursula K. Le Guin

The Dispossessed (S.F. MASTERWORKS) (English Edition)

お互いを月とする二つの惑星 Anaress と Urras では対称的な二つの社会が発展していた。

過酷な環境の Anaress では、限られた資源の中で生き残るために何かを所有する事が禁じられていた。Anaress には貧富の差が無く人は財産を築かず平等に暮らしていた。職業は Divlab が公正に割当て、辛くて危険な仕事も全員で公平に負担していた。子供は早くから親を離れて寄宿舎で生活していた。

Anaress の人々は、貧困と享楽が同居する身分社会の Urras を軽蔑していた。たった一つの港で限られた貿易を行う以外は二つの惑星の往来は禁じられていた。そんな中で、Anaress の若き物理学者の Shevek は、170 年の鎖国を破り Urras に渡る事を決意するのであった。という話。

1974 年に出版された時代性の濃い作品です。遠く離れた異星人の世界を借りて、冷戦時代のイデオロギー史を勉強している気分になれました。所有が禁じられた社会で行う結婚や子育ての描写、嫉妬による足の引っ張りあいや、自由を求める者への迫害などが面白かったです。理想を求める若者たちの会話が熱く、なんかほっこりしました。

正面から書くのが憚られる時代のテーマを SF の世界を借りるのはよくあるパターンですが、最近はどうなんでしょうかね?

ちなみに、舞台となる Tau Ceti 星系というのは、SF 世界でよく使われる舞台装置だそうです。Wikipedia にも説明があります。https://en.wikipedia.org/wiki/Tau_Ceti_in_fiction

後半出てくる Hain 星人というのも作者グウィンの他の小説にも共通して出てくる設定だそうです。https://en.wikipedia.org/wiki/Hainish_Cycle

Wikipedia めっちゃ有り難いです。