ドーキンズの The Selfish Gene という本を読んでいて、細かい事が気になったので改めて減数分裂の仕組みについて調べました。減数分裂というのは、生物が精子や卵子を作る時に自分の遺伝子を半分に分割することです。半分にすることで、受精の時に父方の遺伝子と母方の遺伝子が合体して、ちょうどよく一人分の遺伝子が完成するのです。簡単な話ですが、細かくみると色々疑問が湧いてきます。
- 疑問1: 相同染色体は細胞内でも近くにいるのか?
- 疑問2: 減数分裂の全段階の DNA 複製は不要では?
- 疑問3: 遺伝子はどのように混ざるのか?
- 疑問4: クロスオーバーで遺伝子が壊れないか?
さて、順番に見てゆきましょう!
疑問1: 相同染色体は細胞内でも近くにいるのか?

図1 は減数分裂の前の普段の染色体の様子です。父方と母方それぞれペアの染色体(相同染色体)を別の色で表しています。省略して二個しか描いてませんが、実際は人間の場合全部で 23 ペア全部で 46 本の染色体があります。それぞれの染色体は沢山の遺伝子を含んでいて、そこから遺伝子がどう発現するかは父方と母方両方の遺伝子の組み合わせによって決まります。例えば血液型の例だと、両親から受け継ぐ遺伝子によって A 型、B 型、AB 型、O 型のどれかになります。
さて、相同染色体は細胞のどこにいるでしょうか? 両親の遺伝子(対立遺伝子)を両方みないと子供の性質が決まらないので、常識的に考えて相同染色体は細胞内でも近くにいると思いませんか? 私は思ってました!
答えはハズレです。普段の相同染色体はペアにならずバラバラです。子供の性質はどうやって決まるかというと、単に遺伝子が作り出すタンパク質の濃度で決まるので、対立遺伝子が近くにいなくても大丈夫です。相同染色体同士が近づくのは減数分裂の時だけです。普通の細胞分裂では相同染色体がバラバラのまま分裂します。
疑問2: 減数分裂の前段階の DNA 複製は不要では?
いよいよ減数分裂が始まりますが、その最初のプロセスとして DNA の複製が行われます (図2)。この DNA 複製は普通の細胞分裂の時と同じように染色体の完全なコピーが作られます。これって無駄じゃないですか? つまり、一つの細胞から半分の染色体を持つ細胞二つが生まれるのではなく、一つの細胞の中の染色体を一旦コピーしてから半分にするので、結果四つの細胞が生まれるのです。
減数分裂の前の DNA 複製は減数分裂を行うすべての生物で観測されていて、例外が無いそうです。一見無駄なこのプロセスがなぜ存在しているのでしょう? 昔からこれは疑問視されていて一応現在は進化論的に理由づけられています。要するに減数分裂は普通の分裂から進化したが、無駄だと知りつつ無害なので最初にあった DNA 複製のプロセスが残ってしまったらしいです。
我々プログラマーが既存のコードのコピペで新しい処理を作る時に、無害だが確実に動いている無駄なコードを削る事に躊躇してしまう事に似ています。
疑問3: 遺伝子はどのように混ざるのか?

図3 でついに父方と母方の相同染色体がペアになり、図4 のクロスオーバーという現象で父母の遺伝子が組み替えられます。ここで実際どんな風に組み変わるのでしょうか?
- 別に一本の染色体の中の遺伝子を組み替えなくても、23組の染色体の組み合わせを変えるだけで結構バリエーションが出るので、実は組み換え不要では?
- → これは実例があった!キイロショウジョウバエのオスやカイコのメスではクロスオーバーが起こらないらしい。
- クロスオーバーは相同染色体ペアにつき何回起こるのか? 一回? 二回? それとも 100 回?
- → これは調査によって色々ですが、人間の場合一細胞当たり 20 - 40 回くらい起こるらしい。ということは染色体ペアあたりにするとゼロから二回くらいはクロスオーバーしています。そんなにめちゃくちゃシャッフルしているわけでも無いです。
- 参考:
疑問4: クロスオーバーで遺伝子が壊れないか?
クロスオーバーというのは、父方染色体と母方染色体の二つが途中で交差して遺伝子を混ぜ合わせる現象です。染色体の中で実際にタンパク質を生成し遺伝子として動く部分はわずか 2% との事ですが、もしも遺伝子の途中でクロスオーバーが起こってしまったら遺伝子が壊れてしまうのでは無いでしょうか?!
これは実際に壊れる事もあるのですが、壊れないための工夫も色々あります。
- できるだけ切れて良い場所で切れるようにホットスポットが設定されてある。
- 遺伝子内部で組み換えが起きても、対立遺伝子がほぼ同じなら多少遺伝子配列が交換される程度。
- 参考: 相同組換え - Wikipedia

クロスオーバーが完了すると、あとは一組ずつ染色体が含まれるよう細胞を分裂させるだけです。DNA 複製によって一旦染色体が倍になってしまったので、半数の染色体を含む細胞に分かれるためには分裂を二回行います。図5 の第一分裂でまず二つに分かれ、図6 の第二分裂で四つに分かれ、最終的に精子や卵子が出来上がります。
その他調べれば調べるほど疑問が湧きますが、今日はこのへんにします。この図は 遺伝子撹拌装置をタイミング良く染色体から取り外す仕組み | 東工大ニュース | 東京工業大学 を参考にして、自分が誤解した部分を解消するために工夫して作ったものです。