言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

不登校五年生のパン作り

お正月に私の実家から「パン焼き機」をもらってきた。手軽に家庭で出来立てパンが楽しめると昔流行った時に入手したものだ。実は妻の実家から「餅つき機」をもらった後に全く使ってなくて、使わない家電は貰わない方が良いと妻に言ったばかりだったのでばつが悪かった。思い出の残る家電を孫の家で使って欲しいという年寄りの気持ちを考えるとなかなか断れないものだという事が良くわかった。

とにかく、面倒になる前に一度作ってみる事にした。一番基本の食パンレシピの通りに次女と必要な材料を投入する。次女はケーキやクッキー作りで慣れてきたので、粉を出したり量ったりする動作にだんだん頼り甲斐が出てきた。お菓子作りに比べて粉と水を投入してスイッチを入れるだけなので簡単だ。あとは5時間待って、美味しい食パンが出来上がった!

家族にもなかなか好評で、翌日は材料を変えて食パン型のフランスパンを作った。主な違いは薄力粉を加える事とミルクを入れない事。7時間もかかるので夜に材料を入れて朝焼き上がるようにタイマーをセットすると、パンの焼ける香ばしい香りで朝を迎える事ができた。ちょうど難易度が次女のレベルに合っていて、簡単に美味しいパンが出来上がるので次女は大喜びだった。

「パン焼き機」とは、こね、発酵、焼きを連続して行う機械で、食パンの形なら何でも自動で作れるし、丸いパンを作りたい場合は途中で取り出して別にオーブンで焼けば良いらしい。期待以上に家中が盛り上がった。

時間を売る

年始なので過去の日記を読み返している。愚痴ばっかり書いたと思っていたが意外と少なかった。えらいな私。始まりは三年前に長女が怪我をした事だった。そのまま長女は不登校になり私は子供のケアに専念するため制作を辞めた。さらに翌年私が転職で家を空けるようになると次女も不登校となった。それでも私は希望を失わないように努力してきたつもりだが、一年ほど前に妻が貧血で倒れた後に何もやる気が無くなってしまった。

電話で妻の怪我を聞いた夜の気持ちはよく覚えている。ああ、もうこれはダメだ。いくら努力しても悪い事しか起こらない。今後何も良い事は起こらない。ここから抜け出そうとしても、不気味な力で後ろのどす黒い穴に引っ張られて抜け出せない。

意外にも家族の状況はそれから好転した。妻の怪我はすぐに治り、次女は少しずつ外出できるようになった。長女はセルトラリンの処方以来会話が可能になり、外出は困難だが以前のように饒舌になった。私だけがあの夜の無力感が残ったままだ。それとも、たまたま妻の怪我のタイミングで自覚しただけで自分の無気力には別の理由があるのかも知れない。毎月会社の心理アンケート的な奴に答えているのだが、変だから受診しろとついに警告メールが来た。

話は変わるが若い頃風邪で寝込みながら考えた事がある。

俺は一日八千円のバイトをしている。一日バイトで寝込むと八千円の損害が発生するばかりか、補填のために将来の一日を無駄にする事になる。彫刻家という金を産まない未来を選んだ俺にとってこの損失は莫大だ。損失を最小化するためには、月給の正社員でなければならないし、できたら寝たままでも金が増える仕組みを構築しなければならない。

絶好調の一日も風邪の一日も、一日は同じだ。そうであれば、元気の無い一日を売って、後で元気のある日に売った金を使うべきだ。それから三十年が過ぎて、まあ仕組みはできた。サラリーマンとして寝込んでいても月給は入ってくるし、子供の引きこもりで旅行に行けず貯めた金は株になって何となく増える。バイト暮らしの長い風邪と比べれば時間を無駄にはしていないはずだ。

いつ自分の元気が戻るのか分からないし、その時になって都合よく会社が暇かどうかも分からない。それでも私は無気力な一日を売って、耐える。そして未来を信じて不確実な将来を買うのだ。

自分が無気力になって、かつて軽蔑していた無気力おじさんへの解像度が上がった。人生は勉強になる。

不登校小学五年生はじめてのお泊まり会

コロナ世代の小学生あるあるだけど、ちょうど幼稚園の時期にコロナになったので、うちの双子はお泊まり会を経験していない。さらに他の不登校児と比べても怖がりなので、子供だけで外泊出来るのは遠い未来の話だろうなと思っていた。それが突然お泊まりをしてしまった!

小学校二年の秋に不登校になってから、双子は色んなフリースクールに入ったり辞めたりした。その中で唯一何とか続いているオンラインフリースクールのオフ会が年末に関西で開催された。関西でのオフ会は年二回お寺を借りて土日で行われる。朝四時半に東京の自宅を出発して午後到着。すでに会場は二十人もの不登校児たちで埋め尽くされており、わー、この雰囲気だと混雑嫌いのうちの子たちは途中で帰るかもしれないなーと覚悟した。

夕方に子供達と晩御飯の買い出しに行く事になった。うちの双子もついて来る。スーパーの人混みに長女はついに耐えられなくなり喚き出した。長女だけ隣のコンビニに連れて行きオヤツを与えて落ち着くのを待つ。この調子だと晩御飯の前に帰った方が良いかな。そして何とか晩御飯を終わらせ、いよいよ泊まり組はお風呂に行く時間となった。

ここで何と長女が泊まりたいと言い出した。お姉ちゃんたちと風呂屋にも行きたいと言う。全く準備をしてなかった親はびっくり。たまたま二名キャンセルが出てお布団は余っていたのだが、親の分までは無いし、冬に雑魚寝は厳しい。2年生の秋に足の大怪我をして不登校になって以来風呂屋にも行けなくなったし、親と離れたて寝た事も無いし、無理じゃ無いかと言ったのだが長女は譲らない。私も長距離ドライブで疲れて頭がぼーっとしてきたので、とりあえず次女とお寺の人に長女を任せてみる事にした。夜中呼び出される事を覚悟して、双子を残して親だけ大阪の実家に泊まる。

朝まで特に何も連絡がなかった。ラインに投稿される写真で、無事風呂屋に行って帰ってきた事を知る。後で聞くと、中学生の参加者に風呂屋の靴箱の鍵の仕組みから髪の毛の洗い方まで指導して頂いたらしい。親の言う事はまるで聞かないのに年上のお姉ちゃんには素直だ。

会場に戻ると子供達は誰もいない。どうやら、サイコロの目によって電車の行き先を決める「電車ゲーム」に参加中らしい。去年開催された時、長女は参加できなかった。まさかと思ったが何と今回長女も参加していた。色々びっくりする事が起こる。戻った長女はかなり自信を取り戻した目をしていた。そしてハイテンションで周りの知らないおばちゃん達に話しかけまくる。そういえば以前はこう言う性格だったなと思い出す。

結局突然のお泊まり会で元気になった長女はその翌日も翌々日もオンラインフリースクールの友達と遊び呆けた。この旅行は良い事ばかりではなく、風呂で手が痛くなって泣いたり膝が痛くなって泣いたりしたのだが、一番状態の悪かった一年前 https://propella.hatenablog.com/entry/2024/12/15/221036 に比べて随分良くなった。

次女はというと長女の世話に疲れたのか風邪を引いてしまい。私とおばあちゃんの家で過ごす事となった。良くも悪くも騒がしい長女に振り回されて次女はいつも貧乏くじを引いてしまうが、おばあちゃんは次女と過ごせてご機嫌だった。

不登校小学五年生のクリスマス

双子がクッキーの家を作った。妻が二年程前に型紙を購入していたものの、作る自信が無くしばらく放置していたのだけど、ふとやる気を出して、一発で成功した。僕も何度かクッキーを焼いた事があるのだが、最初は絶対失敗すると思っていた。ただの丸いクッキーでさえ、その日によって生地が柔らか過ぎたり硬過ぎたりして上手く形にならないのに、こんな複雑で大きな物作れるわけが無いと思っていた。あと、アイシングを糊にしてクッキー同士をくっつけるのだが、アイシングも早く固まり過ぎたり遅過ぎたり扱いが難しい。

僕の心配は杞憂であった。硬めに配合した生地のおかげでクッキーは見事に形作られ、アイシングは必要十分な硬さになった。調理を主に担当した次女が、「凄いでしょう!凄いでしょう!」としきりに自慢する。手で押さえたり食べる担当の長女も大満足。思い出に残る経験になった。

クリスマスプレゼントには、僕が勝手に選んだ本にサンタからのメッセージを添えて枕元に置いた。我が家では一応まだサンタがいるふうになっている。朝になり子供部屋の前で聞き耳を立てていると、特にクトゥルフ神話ネタを入れたメッセージが気に入ったみたいで、「親ってあほやなー。ネタとしてめっちゃ嬉しいわー」と喜んでいた(ネットの影響でなぜか大阪弁の長女)。

不登校小学五年生の日常

長女は最近パソコンに飽きてきたのか、二階にこもる事が多くなった。次女と共有の寝室では無く、親の寝室にいる。私が荷物を取りに寝室に入ると、ハッとこちらをみて「どっか行って!」と怒り出す。こっそり AI チャットをやっているようだ。AI チャットについては私は反対なのだが、妻と議論して今のところ様子を見ている。友人との共通の話題なので禁止は可哀そうだという事だ。履歴は見ようと思えば見えるが、本人は毎回ログアウトするなどしてかなり厳重に秘密にしているので、なんとなくここ数ヶ月は見ていない。

オンラインフリースクールには全く参加しなくなり、自分で見つけてきた Discord 友達と毎日通話している。話を聞くと中学生の女の子数人と仲が良いらしい。次女ともよく遊んでいる。相変わらずクトゥルフ神話 TRPG が好きなようだが、どうやって遊んだいるのか全くわからない。食事中に、例の「ふんぐるい むぐるうなふ...」のような呪文を詠唱して一人で喜んでいる。

今日久しぶりに 15 分間だけ長女と英語の勉強をした。すぐに飽きて放り出してしまったが、英語だけは興味があるようで書いてある事は問題なく分かる。

(書きかけの過去の日記だが、記録しておく)

《長女》たんお風呂あらう?

最近我が家では、お風呂を双子で交代で洗うという事になっている。次女は言われた通り素直に洗うが長女はかなり抵抗が激しい。一度言って言う事を聞くという事が無く、何度も根気よく言って機嫌の良い時にようやく洗うという具合だ。実は子供に頼むのも面倒なので自分で洗った方が早いが、少しでも家事を手伝わせて小さな達成感を味わせたいので頑張って頼んでいる。

という事で今日もお風呂洗いの時間になり「今日は誰のお風呂当番だったっけ?」と聞いてみると、長女が

「《長女》たんお風呂あらう?」

と自分で言い出した。これにはびっくりした。実際は次女の当番だったのに、自分に不利な事を長女から言い出すなんてありえない。そう言えば、最近風呂洗いをめちゃめちゃ嫌がる事も少なくなってきたかも。多少責任感も出てきたのか??? 不登校の育児はめちゃくちゃ大変だが、たまにこう言う不思議な瞬間がある。

ランドセルを50円で売る

ふと家の中の不要なものをオフハウスに売りに行った。三日坊主で終わったリングフィットアドベンチャー、古いおもちゃやゲーム。特に期待していた物が新品同様のランドセルだった。このランドセルは高かった。高価な物だが小学校の六年間使う物だから良い物を買おうと頑張った(実際にはおばあちゃんがほとんど出してくれた)。そして二年生で不登校になったのでピカピカだ。なので、オフハウスで50円しか値段が付かないと聞いてガク〜っと来た。考えてみれば、少子化の今中古のランドセルの需要なんてあるわけ無いか。まだピカピカのランドセル。誰かに喜んでもらえますように。