言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

読書

『臨床家のための対人関係療法入門ガイド』水島広子著

『対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD』、『トラウマの現実に向き合う ジャッジメントを手放すということ』と水島広子さんの著作を読んで、いよいよ対人関係療法(IPT)本体の入門書を読んでみました。あわよくば自分で勉強して自分で長女を治療できるのでは…

『トラウマの現実に向き合う ジャッジメントを手放すということ』水島広子著

以前『対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD』を読んで、もうちょっと知りたいと思ったので同じ作者の『トラウマの現実に向き合う』を読んでみた。この本の対象読者は臨床家という事で私なんか対象外ですが、まるで私個人のために書かれたかのように私の今の…

Hillbilly Elegy

アメリカ副大統領 JD Vance が若干 31 歳で書いた今話題のベストセラーらしい。気になった部分をメモ。 著者のルーツはスコットランド系で、ケンタッキー州ジャクソンからオハイオ州ミドルタウンに移住した一家。曽祖父は太平洋戦争に従軍し日本と戦った。 …

『不登校後を生きる』樋口くみ子著

中学高校と二度の不登校を経験後21歳で大検を取得し現在岩手大学准教授の著者が自らの経験を元に不登校当事者に具体的なアドバイスをするという本。経験者ならではの実践的なアドバイスが満載で、うちの子供がもう少し大きくなったら読むのを薦めたいと思っ…

対人関係療法でなおすトラウマ・PTSD 水島広子著

自分の子供の状況に一番ハマる本だったのでまとめます。 対人関係療法とは、トラウマそのものに焦点を当てるのではなく、トラウマの影響を受けた現在の対人関係に焦点をあてて、現在の生活の質を上げるものです(p13)。うつ病の治療にはすでに効果が確立され…

『すいすい学べる認知行動療法』松野航大・嶋大樹・原真太郎

これは良書です!とぼけた感じの書名ですが、認知行動療法の基本がわかりやすく説明されていて、参考文献も豊富で、最初の一冊として最適です。心理学の本って何となくオカルトか、逆に統計ばっかりで味気ないイメージでしたが、適度な理屈っぽさでした。で…

『GRIT やり抜く力』 アンジェラ・ダックワース著

恵まれた生い立ちで高校時代の課外活動が評価されハーバード大学に入学して(p341)研究者になった著者が努力について語るという悪趣味な本。と皮肉っぽく始めてしまったが Chat GPT に勧められて読み進むと案外学びがあったのでメモ。 短く言うと、成功するに…

「叱れば人は育つ」は幻想 村中直人著

育児をしていると子供を叱っちゃいけませんとよく言われます。叱らないで子育てをするのは相当ストレスのかかる事だし、叱らないで甘やかすわけにもいかないし、じゃあどうしたらええねんと言う事が書いてある本です。 なぜ叱ってはいけないのか? 著者による…

『甘えの構造』土井健郎著

1971 年のベストセラー。実家の本棚にもあった気がする。懐かしいので図書館で借りた。不登校の家族の心理の理解に「甘え」というキーワードが便利で参考になった。一方で、著者の日本人論があまりにも一面的過ぎて読んでて辛くなり半分くらいで読むのを辞め…

「学力」の経済学 中室牧子著

「勉強させるためのご褒美は良いか」「子供を褒めて育てるべきか」「ゲームは子供に悪いか」などの質問に実験結果のデータで答えるという面白い本でした。下に面白かった項目をメモります。この本の出版は 2015 年ですが、もしかしたらすでに内容は古いかも…

<学級>の歴史学

こんにちは、不登校の親です。『<学級>の歴史学』という本に不登校の原因は「学級」にある!という面白い事が書いてありました。今読み終わったばかりなので、本の後ろから逆にたどって紹介してみたいと思います! 著者 柳治男(やなぎ はるお) この本の著者…

『こどものスモールトラウマのためにできること』スッダ・クドゥバ著/穂積由利子訳

長女に続いて不登校になってしまった次女の心を理解するために大変良い内容に思えたのでメモします。 天真爛漫で聞き分けの良い子供でも、いつの間にかコミュニケーションが難しくなってしまう事があります。大人の言うことを聞かなくなり、思っている事を表…

The Autobiography of Jean-Luc Picard

邦訳は 『自叙伝 ジャン=リュック・ピカード』。 新スタートレックの主人公で USS エンタープライズ号のピカード艦長による自叙伝です。阿部さんの「フランスのワイン農園出身のピカードが紅茶というのは、なんかイメージがつながらないんですよね。」という…

1984

有名な小説なのでタイトルだけは知ってました。つい最近読んだので感想を残します。 1984 に影響を受けた様々な SF を読んだ事があるからか冒頭の「ビッグ・ブラザー」による監視社会の描写はちょっと退屈になってしまいましたが、うだつの上がらないインテ…

How to Avoid a Climate Disaster: The Solutions We Have and the Breakthroughs We Need

ビル・ゲイツによる、地球温暖化対策についての本です。邦訳も夏頃に出るらしい。教科書のように整理してまとまっているので、現状と今後を知るのに便利です。特に大切と思われる項目をメモします。 現在世界中で人類は 510 億トンのグリーンハウスガス(温室…

The Dispossessed / 邦訳『所有せざる人々』 Ursula K. Le Guin

お互いを月とする二つの惑星 Anaress と Urras では対称的な二つの社会が発展していた。 過酷な環境の Anaress では、限られた資源の中で生き残るために何かを所有する事が禁じられていた。Anaress には貧富の差が無く人は財産を築かず平等に暮らしていた。…

The Tyranny of Merit

機知に富んだ問答で有名なマイケル・サンデル教授が、現在のアメリカの分断について語る滅茶苦茶面白い本です。多くのアメリカが大統領選挙結果をインチキだと思っているというのは極端な例だけど、日本でも分断は他人事ではありません。こういう分断がどこ…

税とオンライン広告とラッファー曲線

最近またマンキューの教科書を読んでいます。ミクロ編の Principles of Microeconomics isbn:0538453044 で税金についてなかなか面白い事が書いてあるのでメモします。まず需要供給曲線について復習。需要供給曲線というのは、生産者と消費者がそれぞれ自分…

論理とギリシャ語順のトリビア

伝統的に、ギリシャ三段論法はこんな風に書きます。 大前提: 全ての人間は死にます。(全ての B は A) 小前提: ソクラテスは人間です。(全ての C は B) 結論: ソクラテスは死にます。(全ての C は A) なんか違和感ありませんか?なんか順番がちぐはぐですね。…

Logic Machines and Diagrams isbn:0226282449 全体的感想

素晴らしい本すぎてどこから書いていいやら分からない!とりあえずメモ論理機械の歴史概観 前4C: アリストテレスの論理学。次の四つの型を組み合わせる。 A : all S is P (universal affirmative) E : no S is P (universal negative) I : some S is P (part…

Logic Machines and Diagrams isbn:0226282449 8章

前の方は技術的な話で詰まってしまったので、簡単な後ろの章を先に読む事にした。8章は電気式の論理機械について。私が購入した 1982 年の版では大幅に書き換えられているが、最初に出版された 1958 年の版では、著者がコンピュータを論理演算に使うのは非現…

ザ・エンジン / ラピュタの島の考える機械 (Logic Machines and Diagrams)

「... ...普通のやり方では芸術や科学を達成するのにどれだけの苦労が要るか誰でも知っておるじゃろう。しかし彼の仕掛けを使えば、全く天才や秀才の力を借りずとも、最も無学な者が、そこそこの値段と少しの肉体労働だけで、哲学、詩、政治、法律、数学、神…