言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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ザ・エンジン / ラピュタの島の考える機械 (Logic Machines and Diagrams)

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「... ...普通のやり方では芸術や科学を達成するのにどれだけの苦労が要るか誰でも知っておるじゃろう。しかし彼の仕掛けを使えば、全く天才や秀才の力を借りずとも、最も無学な者が、そこそこの値段と少しの肉体労働だけで、哲学、詩、政治、法律、数学、神学についての本を書く事ができるのじゃ。」彼はそれから私を枠組みの方に案内しました。脇にはは弟子たちが一列に並んで立っています。 その面積は二十平方フィート、部屋の中心に置かれていました。表面は沢山の木片で組み立てられていました。木片はさいころ程の大きさで、中には他より大きな物もあります。こうした物が全て細い針金で繋がっているのです。これらの木片のあらゆる面には紙が糊付けされていて、いくつかの語形変化、時制、格変化を含んだ彼らの言葉がバラバラな順序で書かれてありました。「見よ、彼がザ・エンジンを動そうとしておる。」教授は私に言いました。 弟子たちはそれぞれ合図に従い、周りの枠組みに四十ほど取り付けられた鉄のハンドルを握りました。それを突然回転したかと思うと全ての言葉の並びががらりと一変したのでした。 彼は三十六人の弟子に、枠組みに現れたとおり何行か静かに読むよう命じました。彼らは合わせて文章の一部になるような三つか四つの単語を見つけ、残り四人の弟子にそれを書き取らせました。 この作業は三四回繰り返し行われました。 その度にザ・エンジンは複雑に動き、木の四辺が上下に動くのにあわせ単語の位置は移り変わるのでした。

ガリヴァー旅行記の第三篇に登場する空飛ぶ島ラピュタ、その第五章に、文学に登場する世界初のコンピュータとされる機械が登場します。残念ながら青空文庫ではかなり省略されていたので、ここだけ訳してみました。この機械の元ネタは13 世紀の哲学者ライムンドゥス・ルルスが考案した『ルルスの円盤』だとされています。

私が初めてルルスの円盤の話を知ったのは、大学四回生の時に西垣通の本(書名忘れた)を手に取ったのが最初でした。それから衝撃を受けて「論理機械を自分で作ろう!」と思ったのです。しかし、それから他にルルスと論理機械について書いてある本に巡り会う事は無く、寂しい思いをしていましたが、ついに決定版を見つけました。それはマーティン・ガードナーによる Logic Machines and Diagrams isbn:0226282449 です。

論理機械とは、数値計算を目的とする普通の計算器と違って、文の論理的な正しさや証明を扱う計算機です。コンピュータが登場する以前は、それなりに確立されたジャンルだったらしいです。

論理機械の夢は、アリストテレスを始祖とする論理学を機械の力で解こうという物です。面白い事に、論理機械には微妙に神がかった人々をおびき出す魔力があるらしく、登場人物も元祖ルルスから始まり、スウィフト、キルヒャーライプニッツルイス・キャロルなど、癖のある人物ばかり。私が気づかなかっただけでかなり奥の深い歴史がある事が分かりました。まだ第一章しか読んでないのですが、勿体なくて速く読めない!またちょくちょく読書ノートを取ろうと思っています。