言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

藤本由紀夫 美術館の遠足

例年ながらすばらしい一日。最後の一日。でも、眠いのであとで書きます。
___
5月27日の日記を一週間後に書いています。関西に住んでて美術館の遠足を知らんかったらモグリだろー。と言わんばかりに沢山人が来てました。そう、その日はとうとう美術館の遠足最終回。10年間の名残を惜しむべくやってきた沢山の知り合いに再会。ずっとおしゃべりで一日過ぎました。主役の藤本さんはサインを求める長蛇の列に追われ、ずっと立ちっぱなしでおられた。大変だなー。ミヤタニ氏に聞いた所によると、最後の遠足は最初からそういう日にする予定だったとか。つまり、藤本さんの作品をずらっと並べる個展らしいやつは実は前回でおしまいで、最終回は「美術館の遠足」のタイトルどおり、観客が美術館の裏も表もそのまま楽しむ場にしよう!という事だったらしい。

なるほど!だからぜんぜん作品が置いてないのか。

で、それでも突然作品の話。二階の展示室IIです。階段の踊り場から暗い室内へ入る時、まず観客は自分の影を見ます。壁の向こうには入り口の形に枠どられた光が自然に映って、その中の自分のシルエットは絵画然としているわけです。

次の絵画は藤本版大ガラス。左手にスポットライトを浴びて沢山のオルゴールが取り付けられた枠が立てかけてあり、子供たちがまわして音を立てています。音の作品なのに不思議と音の記憶はあまり無く、覚えているのは枠の周りにセピア色に浮かび上がる子供たちの群れと、それを取り囲む親のデジカメから発せられる LED の緑の光、フラッシュの煌き。様々な光ががらんどうの展示室に奇妙な非現実感を生みます。

そしてその反対の面には、人一人通れるサイズの非常口が何気なく開いていて、そこから屋外の光と風がやってきます。外に向かう観客の風で髪がなびき、スカートがはためき、ふと一人上を見上げると、どこと無く響く通低音の音源がそこにあります。一人が気づくと他の人がやってきて、横からの柔らかな光の中で一斉に上を見上げる。。。

どこまで狙ったのか知らないけど、この良くできた劇的空間にはとても笑けたのです。作品は私たち自身。この部屋だけじゃなくって、美術館全体がこんな感じで、ここまでうまく乗せる藤本さんの巧さには、ほんと、脱帽です。