言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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インディペンデンス・デイ

インディペンデンス・デイは部屋でのんびり過ごすと決めていたので、僕は夕食の鯵を焼きながらぼんやりテレビで花火を見ていた。壮大な花火の映像をしばらく見ていると、ふと、ドドーン、ドドーン、という低い響きが窓の向こうから伝わってくるのに気が付いた。もしかして、近くで花火をやっているのかもしれない。

わくわくしてアパートを出て、音の方角へ向かう。交差点を渡る時、大きな荷物を引きずりながらとぼとぼ歩く老婆とすれ違った。老婆は渡りきれず信号が変わり、車がクラクションを鳴らし始めた。僕は仕方無しに引き返し、彼女の荷物を持ち彼女の手を取って走った。

交差点を渡り終えるともう一人連れが居て、実はホームレスの夫婦だった事が分かった。夫の方は僕を見ると色々話かけてくるのだが、僕の英語じゃよく分からない。僕が日本人だと言うと、「日本人か?日本と言えばラジオだ!」と言った。

ラジオを作っている人がいるかも知れないけど、別に日本はラジオの国では無いと反論したのだが、老人は納得せず、「日本はラジオだ。そしてお金を作っておるのだ!」と言った。「日本はラジオを作り、そしてお金を作っている。そうだろ!」と繰り返した。

奥さんは申し訳なく思ったのか、「ハニー、この方はお家に急いでいるのよ。」と言ってくれたので僕は解放された。そして再び信号を渡った。

相変わらず、ドドーン、ドドーン、と腹の底に響く花火の音は続いていた。僕は花火の方向へ走り出した。

いつまで走っても、光は見えなかった。