先月のゴールデンウィークに、けいはんなで開かれた Maker Faire Kyoto 2019 に出展しました(https://makezine.jp/event/makers-mfk2019/m0093/)。その記録と感想です。
木製全加算器 2019
まず今回のメイン作品がこの『木製全加算器 2019』です。1 + 1 + 1 = 3 までの計算が出来る加算器です。加算器の作品を初めて作ったのは 2009 年 (https://propella.hatenablog.com/entry/20081124/p1) の事ですが、当時から自然の発想として、次のステップは全加算器だと思っていました。それから怖ろしいことに全加算器の完成まで十年を費やしてしまいました!!!なぜこんなに時間がかかってしまったかと言いますと、全加算器を実現するだけの加工精度と低摩擦を得る方法を思い浮かばなかったのと、なかなか集中出来る時間がとれなかったからです。それでも諦めずにいればなんとかなるもんですね。
ド・モルガンの円盤 2019
木製全加算器の前に Fusion 360 の練習として作りました。これまでは Illustrator だけで設計を行っていたのですが、やっぱり平面だけだと部品の干渉に気が付かなかったり、ボリュームの確認が出来なかったりして手戻りが多かったので、頑張ってこの 3D CAD を練習しました。3D で確認出来るので重宝してますが、構造が複雑になるとすぐに重くなるのが難点です。
この作品は基本的な論理演算である AND と OR を簡単な機構で実現したものです。他のすべての回転型論理器械で同じ仕組みを使っています。ド・モルガンの法則を物理的に示す事が出来ます。
木製半加算器 2017
小型の半加算器です。アートスペース虹の最後のグループ展で展示した物です。基本的な仕組みは半加算器 2016 と同様ですが、二つの軸を同じ方向に回転させる平行クランクの採用により小型化を実現しました。
木製半加算器 2016
初めて作成した回転型の論理器械です。回転の動きを使うことによって摩擦が減り、将来の全加算器の実現が可能になりました。また、部品がバラバラにならず、作者が展覧会場に常駐しなくても壊れないメンテナンスフリーな点も画期的でした。
ブールそろばん 2010
スライド式論理器械の機構を説明するために作成した物です(https://propella.hatenablog.com/entry/20100509/p2)。スライド式は回転式よりも扱いが難しいですが、動きがより直感的なので説明には向いています。
木製半加算器 2009
初めて展覧会で発表した木製加算器です(https://propella.hatenablog.com/entry/20091202/p1)。この頃はスライド式の機構で、しかも部品はジグソーパズルのように台に置くだけなので、作者が不在だとすぐに壊されるという展示しづらい作品でした(この写真もうっかり部品の置き方を間違ってしまっています)。この展示の苦労から後の回転式の機構が生まれました。スライド式は高い工作精度が要求され、何かの拍子に動かなくなるのも難点です。今回も最初全然動かなかったのですが、なぜか会期後半にはラクラク動くようになりました。
チラシ
https://drive.google.com/file/d/1OQ04TiBMRlbmNoBKzczilhJcIdFEo5V5/view?usp=sharing
簡単ですが、今回の展示作品の仕組みについて簡単に解説した物です。
感想
Maker Faire に出展するのは三度目でした。前の二回は電子工作でしたが、今回はなんの変哲も無い木工作品なので、果たして Maker Faire の客層的にウケるかどうかとても心配でした。蓋をあけると皆様大変好意的で、とても楽しい展示となりました。
特に意外だったのが子供にめちゃくちゃ受けた事です。作品内容がかなりマニアックなので、自分みたいなコンピュータエンジニアを想定客としていたのですが、どういうわけか沢山の小学生がガッツリと前に陣取ってあれこれ遊んでしました。小学生にブール演算について説明出来るほどの説明スキルが自分に無く適当にお茶を濁していたのですが、自分でも子供がどこに興味を惹かれているのかよく分かりませんでした。
幸いにも次回 8月3,4日に開催される Maker Faire Tokyo への出展が決まりましたので、その計画もまた書きます。
参考
- スライド「コンピュータを(木で)作る」2016 https://propella.github.io/halfadder-slide/index.html