先週末は東京ビッグサイトで Maker Faire Tokyo 2020 https://makezine.jp/event/mft2020/ に出品しました。新型コロナの影響で他のイベントも無くレストランも閉まりひっそりとした中 Maker Faire 会場だけは大盛りあがりで、なんとなく『漂流教室』っぽかった。ぼくたちは未来にまかれた種なのだ。
Dr. Nim 2020
今回の新作は Dr. Nim 2020 という対戦ゲーム(?) です。Dr. Nim とは 1960 年代に米国 E.S.R. 社によって開発された知育玩具で、Nim というゲームを行うコンピュータの動作をモデル化したものです。
このゲームは、置かれたビー玉を人間とコンピュータで交互に取ってゆき、最後に取ったほうが勝ちで、一度に最大3つまでのビー玉を取る事が出来るというルールです。
からくりで作られたカウンタ機構により、必ずコンピュータが勝利するつもりでした。ただ当日は私の工作が下手くそなせいで、結構人間が買ったり、ビー玉がどこかへ行ってしまって何度も勝敗不明になってしまいました。このゲームはルールの分かりやすさといい機構の難易度といい、かなり気に入っているので、今後も完成度を上げてゆきたいです。
今後の計画
もともと 20 年以上前に私がコンピュータをテーマに作品を作り始めた時の目標は、電気を使わない汎用コンピュータを作るというものでした。ただ、どうやらこの目標自体は Turing Tumble というプロジェクトで 2015 年頃に達成されてしまったようなので、現在色々な視点で方向転換を試みている所です。
一つの視点は「チューリング完全」という用語について自分自身で正確に把握する事です。なんとなく、自分自身を模倣出来るほど複雑な機械はチューリング完全なのだと曖昧に理解しているのですが、ある機械がチューリング完全なのかどうか自分で証明出来るようにしておきたい。
次に、機械式コンピュータの歴史を整理したいです。先に挙げた Turing Tumble は E.S.R. 社の Digi Comp シリーズの状態遷移機構を元にしていますが、機械式コンピュータの元祖である Zuse Z1 はむしろ私の機構に近い論理演算素子の組み合わせで出来ています。これら過去のアイデアを整理して見落としが無いか確認したいと思っています。今回私があえて E.S.R. 社の Dr. Nim をコピーしたのも、先人のアイデアから学ぼうという試みです。
また、やはり機構の美しさに焦点を合わせたいです。今回の Maker Faire でも意匠についてコメントして下さる方が多くて意外でした。なんとなくメイカーの皆さんはヘボい見た目を好む印象だったので。僕は出身が美術畑な反動で作品の美的側面については出来るだけ考えないようにしていました。今までは動きが美しければ見た目は自動的に美しくなる、すなわち機能美。見た目を第一に考えるなんて邪道だという方針でしたが、技術的にすごい作品を作ってる人は他に沢山いらっしゃるので、せめて見た目だけでも負けないように頑張ろう。。。と思い直しました。
最後に、作品をもっと頑丈にしたいです。今回も子どもたちに大人気でみんな熱心に遊んでくれました。最初は説明もちゃんと聞いてくれないしただガチャガチャ遊ばれて困ったなーと思ってたけど、僕の用意した説明なんか無視しても学ぶものがあるかも知れないし、もしかして僕が思いもよらなかった何かを発見してくれるかも知れない。僕も子供だったら話を聞かないで触るだろうなと思うので、作品の意味はともかく、単なるおもちゃとして扱っても大丈夫な作りにしたいと思いました。
展示作品
- Dr. Nim 2020: メイカーフェア東京 2020 向けに制作した Dr. Nim の翻案です。
- 木製半加算器リンク機構 2020: つくばミニメイカーフェア 2020 向けに制作したリンク式木製半加算器です。
- ド・モルガンのリンク機構 2020: つくばミニメイカーフェア 2020 向けに制作したリンク式論理計算器です。
- 木製全加算器 2019 REV4: メイカーフェア東京 2019 向けに制作した回転式木製全加算器です。
- ド・モルガンの円盤 2019: メイカーフェア京都 2019 向けに制作した回転式の論理計算器です。
- 木製半加算器 2017 京都アートスペース虹の 「非在の庭 最終章」 に出品した物の複製です。
- 木製半加算器 2016: 大阪 ARTCOURT GALLERY の ART1 2016: Stepping into Fresh Snow に出品した物です。
- ブールそろばん 2010: スライド式の論理計算器です。
- 説明用チラシ: https://photos.app.goo.gl/duCunJyuFdvY1XeJA