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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

自宅購入の顛末

本当は Maker Faire Tokyo 2020 の準備をしたいのだが、仕事で疲れてどうにもやる気が出ないので酒でも呑みながら自宅購入の顛末でも書く。記録によれば、初めて自宅購入を意識したのは 2017 年の夏の事だ。この日初めて近所の新築マンションのショールームに行った。賃貸か購入かという果てしない議論があるが僕はどっちかというと賃貸派だ。将来に自信が無いので出来るだけ身軽な方が良い。新築マンションはキラキラして魅力的に思えたが、さらにその後の豪雨で武蔵小杉のマンションでうんこが禁止になった話を聞いたり、だれも管理費を払わなくなった湯沢の老朽リゾートマンションの話を聞くうちにマンション購入は無いでしょという事になった。

しかし実は、私には念願があって、いつか自宅に自分のアトリエを持ちたいと思っていた。もう 20 年近く大阪の倉庫に作品を保存してあるが、一生そこに置いておくわけにはいかない。もう歳も 50 近くこの先何年生きられるか分からない。生きているうちに自宅に自分のアトリエを持ちたい。そうなると賃貸では無理である。そう思ってアトリエになりそうなスペースのある中古物件を探し始めた。金が無いので新築は最初から断念している。

アトリエのある住宅なんかあるはずない!と普通は思うでしょう。しかし探せば意外とあります。中にはズバリ彫刻家の住んでいた住居というのが学芸大前にあって、めちゃくちゃ欲しかったのだが、高い天窓のある完全にアトリエに特化した住居で洗濯物を干す所も無いし寝るのは屋根裏なので家族の事を考えて諦めました。そこまで極端で無いにしても意外と自宅でバレエ教室をやっていた家とか、おばあちゃんが踊りの家元だったり、様々な家の形があるものだ。そうこう一年以上探しているうちに次第と自分と家族が家に求める条件が明確になって来た。

まず僕の条件はアトリエがあること。他は正直どうでも良い。アトリエがあれば寝るのは屋根裏でも良いです。あと奥さんは意外と駅チカを求めている事が分かった。駅チカとは贅沢な。しかしどの駅という条件は無い。めったに電車が通らない支線であっても駅チカは駅チカである。そして都心からはるか離れたローカル線のそばに、昔おじいさんがカラオケルームとして作ったという地下室のあるお家を見つけた。

莫大な借金と引き換えにその家を購入し、ダンボールだらけの地下室で今この文を書いている。大阪の作品をここまで運ぶとなるとさらに一仕事だが、とりあえず実現の目処は付いた。今ではなぜ人は無謀な借金をしてまで家を買うのか分かる。どうせ元気に生きられるのはあと十年やそこらだ。定年までに死ぬかもしれない(実際私の父は死んだ)。どうせ死ぬなら限度いっぱい借金をして、好き放題生きる方が良い。途中で死んで団信のお世話になるかも知れないし、最悪失業で借金を返せず家を手放す羽目になるかも知れない。だから何だ? 無難に賃貸に住んで一生アトリエを持てないよりよっぽど良い。

今更彫刻家として名を売るわけでも無い。郵便配達夫シュバルのように、自分のささやかなテリトリーの中で誰にも迷惑をかけず(家族にはすでに迷惑をかけている。ごめん)、借金を払いながら作品を作る。それが俺のやりたい事だ。