言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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モバゲーで遊びたい(ドラッカーのイノベーション論)

今週末日本に出張に行くのですが、帰ったらやってみたい事に今流行のモバゲーとかグリーとかの携帯電話ゲームがあります。といっても私はゲームが苦手なので、出来たら上手な人のやってるとこを見たいです。というのも、これってすっごい儲かってるらしいじゃないですか、あと、すっごい叩く人いるじゃないですか、貧乏人からさらに金を巻き上げる貧困ビジネスだとか言って。こういう、頑張って叩く人がいるジャンルって滅茶苦茶面白そうです。

それと、もしかしてこの携帯電話ゲームというのが、まさにドラッカーが 『イノベーションと企業家精神』isbn:4478370176 で書いている七つのイノベーションの源泉のその 1 にぴったりはまるケースをリアルタイムで見てるんじゃないかとドキドキしています。一応七つの源泉を重要な順に書きます。

  • 意図していなかったもの。意図しない成功や失敗や外部の出来事
  • ちぐはぐなもの。実際に起こっている事と起こるべきとされている事に違いがあるもの。
  • 必要とされているもの。
  • 産業や市場が知らないうちに変化しているもの。
  • 人口動態。
  • 考え方、雰囲気や意味の変化。
  • 新しい知識。科学的なもの、非科学的なもの(なんとこれが最後!)

この意図していなかったものの例はこんなのです。1950 年代に百貨店の Macy's では店の売り上げの中で特に家庭用品コーナーに人気がある事に気がついていました。しかし Macy's は自分をファッション中心の百貨店だと思っていたので、その人気を不気味がるだけでした。一方新興百貨店の Bloomingdale's では家庭用品コーナーを主力にして 1970 年代には一挙にニューヨークで最もお洒落な百貨店という名声を得たらしいです。

もう一つ身近な例としては日本のテレビの話があります。1950 年代に家電を牛耳っていたのは東芝や日立と言った名門です。それらの名門は銀座の一等地でテレビを展示しながらも、貧しい日本ではまだまだテレビは普及しないだろうと考えていました。

そこで賢かったのが当時新興企業の松下電器です。松下電器は、テレビが意外と広い世界を知る機会の無かった田舎の人たちに人気がある事に気づきました。また、そもそも田舎者には自分たちがテレビが買えないほどの貧乏人である事すら理解できないだろうと考えました。そして名門企業が行かない村々に販売網を作り、一軒一軒廻ってそれまで木綿のパンツやアイロンより高い物を買った事の無い村人にテレビを高額で売りつけたのです(と、こんな酷い書き方をしてるのは私ではなくドラッカーです)。

この教訓を無理矢理モバゲーと結びつけると、携帯電話ゲームというのは昔からあったと。しかし携帯電話ゲームというのはトラック野郎と風俗嬢しか遊ばない物だからまともな会社は相手にしていなかった。そこで若手ベンチャー颯爽と現れ巨大市場を作ってしまった。つまり、ドラッカーの言う「意図していなかったもの」そのままのストーリーが後年生まれるのでは。

ここでテレビはメディアの育成に一定の役割を果たしたがゲームは貧乏人を搾取しているだけでは無いかと言うのは簡単ですが、そういった倫理という物は時代が経つとどうせ変わるので、将来携帯電話ゲームが知的遊戯としてメジャーになったらだれも嫌味言わなくなるでしょう。