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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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貯蓄とは何か。投資とは何か。

今日はマンキュー経済学の『26章 貯蓄、投資、金融機関』のメモです。経済学の本を読んでいて時々訳が分からなくなる事があります。そう言う時はたいてい、専門用語と普通の言葉の意味が違うからです。パソコン用語でもそういうの沢山ありますね。特にGDP(国民総生産)の内訳に使われる saving(貯蓄) と investment(投資) はかなりトリッキーなので忘れないように書きます。

  • 貯蓄とは、GDP のうち作ったけど余った分の事で、あとで海外旅行に行くために貯金する(結局さいごは消費する)のは貯蓄に入れません。
  • 投資とは、GDP のうち後でさらに生産するための設備に使う物で、余ったお金を株で増やすというのは投資に入れません。
  • GDP の中で貯蓄で余ったお金は全て投資に使われます。利子がこの需要と供給のバランス取ります。

GDP というのは、この一年間にある国でみんなが頑張って働いて出来た物やサービスの全体の事です。頑張って出来たものは誰かが消費してしまうのですが、その使い方としてWikipedia ではこのように分類しています。

国内総生産 = 消費支出 + 投資支出 + 政府支出 + 経常収支

つまり、みんなが作った物は、みんなが消費してしまうか、投資に使うか、政府が使うか、外国に売るかのどれかだと言う事です。このうち消費支出と政府支出と経常収支については分かりやすいと思います。作ったものの中ではみんなで食べたり使ったりする分と、政府に使われた分と、余って外国に売る分です。では投資支出とは何でしょうか?なぜ生産の内訳に投資が入るのでしょうか?

普通支出というと、お金を払って買う事言います。そして投資支出というと、なんだか株を買ったりしてお金を増やす事を思い浮かびますが、マクロ経済ではそう言うのは投資とは言いません。投資というのは、工場とか機械とか、将来の生産のために物を買う事だけを言います。

特に上の GDP の式を生産した物の分配と考えると、例えば作った鉄なり材木なりで次の工場を作る分を投資支出と考えます。特に、物の流れを考える時は物の事だけを考えてお金の事を考えない方が良いです。お金は物とは逆の方向に動くので同時に考えるとややこしいからです。

次に貯蓄の事を考えます。貯蓄の定義は次の物です。

貯蓄 = 国民総生産 - 消費支出 - 政府支出 - 経常収支

単に言葉遊びのようにも見えますが、貯蓄とは、GDP から消費分と政府分と貿易分を引いた物、つまり投資と同じ量です。しかしわざわざ別の言葉を用意しているのには意味があって、貯蓄はお金を出す側、投資はお金を受け取る側で、両者は利子と市場によってうまくバランスが取れていると考えるのです。

この事をよーく理解すると、例えば「貯蓄や投資は将来の成長を促す」という言葉の意味がようやく分かって来ます。例えば株を買っても、それはお金と株という同価値の物を交換しただけで、そこは投資と言いません。株によって資金を得た人が人を雇ったり工場を買ったりする部分を投資と言うわけです。

さらに、貿易が絡むともっと話は面白くなります。投資と貯蓄が同じように、輸出と capital outflow が同じだという話があります。これはどういう事かというと、日本がアメリカに車を売るというのは、日本がアメリカに投資するのと同じだという話です。日本がアメリカに物を売ると、その分日本はドルを持つという事になりますが、これはアメリカ人の代わりに日本人が貯蓄してあげるのと同じ効果があります。アメリカ人が全然貯蓄しないのに成長に不自由しないのはこういうカラクリがあるらしいです。この話は理解したらまた今度書きます。