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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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ヒルコ

それから調べていくと、同じ日本神話の解釈でも結構人によって色々だという事が分かったので、岩波文庫古事記をもう一度最初から読んで自分で考える事にしました。この本は結構お得な本で、一冊の本に倉野憲司による詳しい注釈入り訓み下し文と原文が入ってます。原文は、漢文にレ点を打ったものでさっぱり歯が立たないが、訓み下し文の本はなかなか面白い。

実は僕が最初に古事記に引っかかったのが、イザナミイザナギの最初の子の記述です。彼らが最初に生むのはヒルコ。しかし葦船ですぐ流されてしまいます。文庫の注では、水蛭子と当てられている事から、ヒルのような骨の無い障害児だった事が示されています。人類史上初のセックスの成果が障害児なのです。古事記ではその原因として、女性から男性を誘ったからだという事になっていますが、後にさんざん女性が活躍する話は出てくるのでちょっと後づけ臭い。

またさらにも面白いのは、別の説によると、ヒルコ(日子)というのはヒルメ(日女:アマテラス)と対を成す男神であったという話です。その後アマテラスに与えられた強大な能力を考えると、あるいはヒルコもまた強大な力を持った神だったのかも知れない。その強力な第一子が何らかの理由により葬り去られてしまう不条理と不気味さを感じます。都合の悪い事ならわざわざ書く事も無いのに、それも出来ない理由が背後にあったのだろうか???

このような魅力的なヒルコはやはりかなりの人気者らしく、ウェブでちょっと調べるだけで山ほど各地の伝承が出てきます。そういったヒルコの足跡をたずねて行くのも乙な物かも知れません。