言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

ビフテキ

『Croquet の生み出す力は国家ではなく、個人に利益をもたらす。』

庭で厚さ5センチのビフテキを焼きながら、デイビッドは熱く語った。実は3D 自体はそれほど重要ではない。3D は複数の視点で何かを語り合うのにとても有効だが、本質はコラボレーションそのものにある。俺たちがそう、このボールについてここで話しているのに、アランがグレンデールから参加する事も出来る。国家は監視カメラやなんかで自由を制限しようと試みるが、後10年もしてみろ、俺たちの Croquet がポケットに入るようになって、そういう自由を制限する力を吹き飛ばす。ただ、テロリストにも同じ力を与えるかという問題もあるんだけど。

アランが初期の Smalltalk でやった事を知っているだろう? そう、複数のウインドウを重ねて多くの情報を俯瞰的に眺める事が出来るようにした。Croquet の 3D 機能はただそれの延長線上に過ぎない。どのみち、二次元は三次元に含まれるんだ。この葉っぱ一枚一枚を細かく見るだけじゃなくて、視点を引いてそこの林や、置くに見えるジャングルを一望できるようになる(実際にデイビッドの庭の向こうはジャングルのようになっている)。

さらにそこに含まれるスクリプティング言語は重要だ。俺は英語で話すし、君は日本語で話す。どちらにせよ自然言語はあいまいな物だ。そこにスクリプティング言語を介在させる事によって、より正確な概念の交換は明確になる。正直現在のeToys は気に入ってないんだけど、Croquet にはさらに改良したスクリプティング言語を組み込む。知ってるだろう? 本来スクリプティング言語はある程度複雑な事もシンプルに記述できるべきだけど、eToys は複雑すぎる。

合間にデイビッドのごつい息子が登場し、プールで鼻を擦りむいちゃったよなんて言いながら、延々彼の話は続く。さて、彼の新しいスクリプティング言語だが、相当関数型言語を意識した作りになっている(と、彼は言う)。とはいえ、実時間での P2P 通信やイベントハンドリングなども含めるとステートレスなんて有り得ない訳で、そこどうするのと聞くと、実は全然考えてないから、これ読んでタカシ、君が考えれば良い。と Haskell の分厚い本を渡される。

もう7時なのに空は煌々と明るくて、ビールのせいかも知れないが何だか非常に疲れる。しかしビフテキはメチャクチャ美味かった。