言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

ノースカロライナ到着

『彼、何してる人?』

驚いたのは、僕の事を尋ねられたデイビッドがレンタカー屋のお兄さんに言った事。

『HPの資金でオープンソースの新しい OS を一緒に作ってるんだ。君もダウンロード出来るよ。』

驚いたのは2点。こんな所でオープンソースとさらりと言えるほど、オープンソースは市民権を得た言葉なんだと言う事。そして、これから作ろうとしているのが単なる 3D フレームワークではなく、オペレーションシステムだと言う事。いや、聞いてたけど、あっさり言うほど自明な事だったのだ。

映画に出てきそうな美しい彼の家の書斎で最新の croquet の進捗と、僕がやるべき事をさらりと聞く。どうもデイビッドは現在のウインドウのデザインがあまり気に入らないらしく、もっと良くしたいのだと言う。そしてもちろん、他に何かしたいことがあれば何やってても良いよ、と。

croquet の一つのイメージとして、彼が名刺に使っているイラストが浮かぶだろう。一人のヒーローが不思議な形の窓の前で、向こう側の未来都市を凝視している姿だ。これは croquet の為に描かれた物だと思っていたが、昔の SF の表紙から勝手に取ってきたものだそうだ(本を見せてもらったが、書名は忘れてしまった)。

croquet のウインドウの役割は現在の二次元ウインドウシステムのウインドウとほぼ同じ物だ。他の世界に行くためのどこでもドアや、ミラー効果の為という印象が強いが、実際はもっと汎用的で、3D のままでは扱いにくい色々な物を、窓というメタファで自由に扱いやすくする。croquet の印象を大きく左右する物なだけに、大変な仕事だなと思う。そして、僕には数学の素養が無い。

と、デイビッドに言った。マトリックスの計算も知らないし、OpenGL も大変そうだし。すると、まー簡単だからすぐ出来るよ。あんまり理屈が分からなくても、感じて使えればそれで良い。君は変わった事が出来るから、出来ると思って呼んだんだ。僕は今まで正直、美大なんて出るもんじゃ無かったと後悔した事もあったが、こんな所でハッタリが通用するとは捨てたもんじゃ無い。