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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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長女の怪我の記録その8

長女の花粉症は目薬で落ち着いてきた。最初の数日間は目薬で余計に酷くなって治らないのではと心配したが、我慢強く続けたら少しずつ治まってきた。前回風邪の後に頻尿が悪化したので今回も花粉症が悪化に繋がるのではと心配していたが、今の所大丈夫だ。家に閉じこもるのは良くないので花粉症用のゴーグル https://www.amazon.co.jp/dp/B0834FD3PR/ を購入した。

べオーバの投薬をやめてしばらく経つが、尿もれの量はあまり変化無く一日 8g 程度だ。薬が効かないのが分かったので、頻尿の治療方針としては精神科のカウンセリングの他、できるだけお茶を飲んむくらいだ。以前泌尿器科では尿量が少ないと指摘され、また尿意は排尿の後特に強くなると分かっているので、尿量が少ないために膀胱が満タンの時と空の時の差が少なくなり、排尿筋による微小収縮を過敏に検知して尿意に繋がっているのでは無いかと私は考えている。お茶を飲んで膀胱の満タンと空の差を広げる事で尿意の閾値が上がる事を期待している。

医者に知識が無く当てにならないので自分で調べている。今までの調査で分かったこと。

  • 病名は EDUF (extraordinary daytime urinary frequency / 昼間超頻尿症候群)
  • 治療法
    • 薬物療法 (効果なし)
    • カウンセリング (継続中だが効果なし)
    • バイオフィードバック
    • ラクトースの摂取

今日はこの論文のサマリを読む Extraordinary daytime only urinary frequency in childhood: Prevalence, diagnosis, and management - ScienceDirect。全文は有料だが、サマリだけでも結構参考になるのでここにまとめる。

  • 小児排尿障害の中で EDOUF (children with extraordinary daytime only urinary frequency) はどれくらい見られるか。季節性はあるか。
    • 割合: 12.1%
    • 夏だけ少ない。
  • 膀胱圧異常との関連。
    • 排尿異常なし
    • 1/106 排尿後の膀胱厚が 5mm 以上
    • 1/106 排尿後残尿があった。
    • 106/106 おもらしなしで膀胱量の 80% まで貯められた。
  • postponing micturition exercise (PME / おしっこの我慢) が効果的かどうか。
    • 98.1% の患者に効果があった。すごい好成績に見えるが、三ヶ月だと勝手に直ったケースも多いかも知れない。
  • 2012年3月から2015年2月の患者の記録の詳細。
    • 13,200名: 全患者
    • 106名: EDOUF のみ
    • 768名: 夜尿症か OAB を併発
    • EDOUF 割合: 12.1% 106 / (106 + 768)
    • EDOUF 症状が断続的に現れた患者80.2% (85 / 106)
    • 平均年齢: 6.8歳
    • 発症から検査までの平均期間: 6.1ヶ月
  • 残尿量と膀胱壁厚を超音波と uroflowmetry (?) で計測。
  • 漏らさずに膀胱の 80% までおしっこを貯められたら EDOUF と判定。(他の病気を除外するため?)
  • おしっこを三時間我慢するように指導
  • 三ヶ月後に結果を聞いた。

ということでおしっこを我慢さえすれば 98.1% の高確率で治るらしい。ただ、この数字の分母は夜尿症や過活動膀胱(OAB)を除外しているらしい。EDOUF は過活動膀胱の一種だと思っていたけど違うのかな? 以下 ICCS 定義 Lower Urinary Tract Function in Children and Adolescents: Update Report 6 August 2015 326 Kb の ChatGPT 訳。

  • 過活動膀胱(OAB): 尿路感染(UTI)や他の明らかな病理がない状態で、通常は頻尿や夜間尿が伴い、尿失禁があるかないかで、尿意切迫を伴う症状です。OABの子どもたちのほとんどはデトルーザー過活動を持っていますが、このラベルは膀胱浮腫評価(上記参照)を行った場合にのみ適用できます。切迫性失禁は、尿意切迫と関連した尿の不随意な喪失の苦情であり、したがって、多くのOABの子どもたちに適用されます。
  • 特別な昼間のみの頻尿 (EDOUF):これは、昼間だけ排尿量が少ないことに関連した頻繁な排尿の必要性があるトイレトレーニングされた子どもに適用されます。昼間の排尿頻度は、1時間に少なくとも1回で、排尿量の平均がEBCの50%未満(通常は10~15%)です。失禁はまれで、夜間尿はありません。共存症、つまり、多飲症、糖尿病、尿崩症、昼間の多尿症、尿路感染症、またはウイルス症候群は除外すべきです。

これだけだと似ているようだが、他の定義 Frontiers | Diagnosis and Management of Bladder Dysfunction in Neurologically Normal Children によると EDOUF には urgency (急な尿意) や incontinence (失禁) が無いらしい。

  • EDOUF A sudden increase in daytime voiding frequency unrelated to either urgency or incontinence. Generally associated with anxiety and stressful events.

ということで、おしっこ我慢行動療法 postponing micturition exercise (PME) について調べていきたいと思います。

長女の怪我の記録その7: Childhood extraordinary daytime urinary frequency—a case series and a systematic literature review

よりによって長女が花粉症(?)にかかってしまった。頻尿だけでも大変なのに目が痒くてかわいそう。。。眼医者にもらった薬も効いてない。

さておき、マイペースで症例の調査を続けている。今日は Childhood extraordinary daytime urinary frequency—a case series and a systematic literature review | SpringerLink のメモです。

全文は academia.edu にあります。このサイトの仕組みがよくわからないのですが、会員登録すると PDF をダウンロードする事も出来ます。

この論文は、子供によく現れる昼間だけ極度の頻尿症状になる昼間超頻尿症候群 (extraordinary daytime urinary frequency EDUF) について過去の論文を分析し特徴を抽出しようという物です。

著者自身の経験による EDUF 記録

  • 対象人数: 14人 (男 9, 女 5)
  • 年齢中央値: 5.3 歳
  • 診察前継続期間: 1 - 30 ヶ月 中央値: 4.5 ヶ月
  • 診察後継続期間: 1 - 20 ヶ月

過去論文の調査による EDUF 記録

  • 対象人数: 499人 (57%男児)
  • 年齢中央値: 5.8歳
  • 平均継続期間: 6 ヶ月
  • 季節: 10月から4月にかけての冬が多いという説と平均しているという説がある。
  • その他の症状:
    • 排尿障害: 18% (15/82)
    • おねしょ: 29% (50/171)
    • 元々のおねしょ: 10% (9/89)
    • 二度目のおねしょ: 15% (16/103)
    • 昼間失禁: 27% (11/41)
  • 原因:
    • 精神障害や不安によるもの: 49% (95/194)
      • 学校の問題
      • 家族の死や病気
      • 親の離婚や離別
      • 兄弟の誕生
      • 難民
    • カルシウム過多 (21/96)
    • シュウ酸塩過多 (5/26)
    • 酸性の尿 (9/10)
    • 伝染病、蟯虫
  • 治療
    • 危機的な病気ではないと説明するのが良い。
    • 特定のストレス要因を見つけるのだ大切。
    • カルシウム過多などの場合は指導する。
    • ステロイド抗リウマチ薬、インドメタシン(中国で効果を上げたと報告)、効コリン薬
    • バイオフィードバック。査読なし論文で 86% の子供に効果があった。
    • 水をたくさん飲む
    • シュウ酸塩を含む飲料(紅茶、アイスティー)や酸性の飲料(オレンジ、リンゴ、トマト)やカフェインを避ける。

バイオフィードバックの参考

  • Glazier DB, Ankem MK, Ferlise V, Gazi M, Barone JG (2001) Utility of biofeedback for the daytime syndrome of urinary frequency and urgency of childhood. Urology 57:791–793
  • Goraya JS (2003) Daytime urinary frequency managed with bladder stretch exercises. Indian Pediatr 40:582–583

後で読む

長女の怪我の記録その7

娘の症状について「神経因性頻尿」や「心因性頻尿」でネットで調べているが、どうも古臭い資料しか見つからない。どうも変だなと思っていたら、「小児科診療 Vol.74 No.1 尿の回数が多い(頻尿) 柳橋達彦」によると、国際小児禁制学会(ICCS) で 2006 年に用語の標準化を行ったらしい。もしかしたら最近は新しい用語を使う必要があるのかも知れないと思い、調べてみた。硬い用語で言うと症状は Extraordinary daytime only urinary frequency (昼間超頻尿症候群) に当てはまるようだ。ここだけ ChatGPT による訳を紹介する。

昼間のみの非常に頻繁な尿意:これは、トイレトレーニングが完了した子どもで、昼間だけ小さな排尿量と関連して頻繁に排尿する必要がある場合に適用されます。昼間の排尿頻度は1時間に少なくとも1回で、排尿される平均量はEBC(通常は10〜15%)の50%未満です。尿失禁はまれで、夜間頻尿はありません。共存症、つまり、多飲、糖尿病、腎性尿崩症、昼間の多尿、尿路感染症、ウイルス性症候群は除外されるべきです。

最新の標準は https://www.ics.org/standards にリンクがある Lower Urinary Tract Function in Children and Adolescents: Update Report 6 August 2015 326 Kb だ。

また、日本語訳は標準化されていないが、幼小児の昼間尿失禁の診療とケアの手引き に訳語案が提示されている。

以下にメモを残す。

  • Symptomatic Terms 症状
    • Bladder and Bowel Dysfunction (BBD) 膀胱腸機能不全
      • 以前は lower urinary tract (LUT) dysfunction: 下部尿路機能障害と呼ばれた。
    • BBD は以下の2つに分かれる
      • LUT dysfunction (下部尿路不全)
      • bowel dysfunction (腸機能不全)
    • increased daytime urinary frequency を一日八回以上と定義する。
  • Storage Symptoms 蓄尿症状
    • Increased or decreased voiding frequency
      • Increased frequency 一日8回以上の排尿
      • Decreased frequency 一日3回以下の排尿
    • Incontinence 失禁
      • Continuous incontinence ずっと漏らしっぱなし
      • Intermittent incontinence たまに漏らす
        • Daytime incontinence 昼間失禁
        • Enuresis 夜間失禁
    • Urgency 急におしっこに行きたくなる事
    • Nocturia 寝ている時におしっこに行きたくなる事 (おねしょ以外)
  • 排尿症状
    • Hesitancy おしっこが出来るのにできない事
    • Straining おしっこするのに力が必要な事
    • Weak stream おしっこの流れが弱い事
    • Intermittency 断続的なおしっこ
    • Dysuria おしっこ中の苦痛。開始時の苦痛は尿道、終了時の苦痛は膀胱に関連している可能性がある。
  • その他の症状
    • Holding maneuvers おしっこがまん体勢
    • Feeling of incomplete emptying 残尿感
    • Urinary retention おしっこが出そうなのに出ない
    • Post micturition dribble おしっこの直後勝手に漏れる
    • Spraying (splitting) of the urinary stream おしっこが飛び散る
  • 痛み
    • Bladder pain 下腹部の痛み
    • Urethral pain 尿道の痛み
    • Genital pain 外性器の痛み
  • 診断に使うツール
  • 非侵襲的膀胱日記
    • Bladder diary 膀胱日記
      • 7日間の失禁記録、二日間のおしっこ頻度と尿量
    • Bowel diary 腸日記
  • 下部尿路機能質問票 以下の2つを補完的に使う。日本語訳も探せばある。
    • Dysfunctional voiding symptom score (DVSS)
    • Pediatric urinary incontinence quality of life score (PIN-Q)
  • 心理スクリーニング
    • 臨床行動障害の診断には Child Behavior Checklist (CBCL) がよく使われる。
    • Short screening instrument for psychological problems in enuresis (SSIPPE)
      • CBCL から派生した物らしい
  • おしっこ量の計測
    • Maximum flow rate (Qmax)
      • 最大おしっこ流速 ml/s 二秒間持続すること。
      • 最大おしっこ流速の二乗がおしっこ排出量に比例していれば正常
    • Flow curve shape おしっこ流速カーブ以下の分類がある
      • Bell-shaped curve 健康的
      • Tower-shaped curve 急激な膀胱の収縮で突然おしっこが沢山出る
      • Staccato-shaped curve 途切れないがまばらに出る。
      • Interrupted-shaped curve. とぎれとぎれ出る。
      • Plateau-shaped curve ゆっくり出る。
  • Pelvic Ultrasound 骨盤超音波診断
  • Bladder Wall Thickness 膀胱壁の厚み。空の膀胱と満タンの膀胱を(超音波で?)比較して求める。
  • Rectal Distension 直腸膨張。便秘と相関がある。
  • Invasive Urodynamics 非侵襲的膀胱検査 神経障害の子供にのみ適用
    • Urodynamic (cystometric) techniques 経腹膀胱カテーテルで直接膀胱の蓄尿排尿を計測するらしい。
    • Bladder sensation during filling cystometry カテーテルで膀胱に液体を入れて蓄尿感覚があるか。
    • Detrusor function during filling cystometry カテーテルで膀胱に液体を入れて排尿前に筋収縮が起こらないか。
    • Bladder capacity during filling cystometry カテーテルで膀胱に液体を入れて満タンになる量
    • Bladder compliance during filling cystometry カテーテルによる膀胱量変化 / 膀胱筋圧力変化の比の検査
    • Urethral function during filling cystometry 骨盤底筋電気筋肉図(EMG)で検査した尿道機能
    • Leak point pressures 尿漏れ圧力
      • Detrusor leak point pressure 漏れる最小の膀胱筋圧力。高いと問題。
      • Abdominal leak point pressure わざと膀胱内圧を増加させ漏れる膀胱圧の最小値。低いと問題。
  • Voiding Cystometry 排尿時の圧力と量の関係を検査
    • Detrusor function during voiding 膀胱筋機能検査
    • Urethral function during voiding cystometry 尿道機能検査
  • Four Hour Voiding Observation 四時間かけて排尿機能を観察する。幼児に使う。
  • Signs
    • Signs related to voided volumes 排尿量。排尿日記で記録。
    • maximum voided volume (MVV) 24時間サイクルで最も多い回の排尿量。一日最初の尿かどうかの情報も必要。
    • expected bladder capacity (EBC) 参考として使われる排尿量。30 x (年齢 + 1) ml。一日最初の尿を省く。
    • Signs related to urine output 一日排尿量
  • Conditions/Diagnosis 夜間と昼間において失禁とは 5歳以上の子供が。一ヶ月一度以上が三ヶ月持続する事を条件とする。
  • Subgroups (夜間失禁の分類)
    • monosymptomatic enuresis 夜間失禁のみで他の下部尿路不全が無い
    • non-monosymptomatic enuresis 夜間失禁と他の下部尿路不全がある
    • primary enuresis 最初から夜間失禁がある
    • secondary enuresis 6ヶ月以上正常期間の後に夜間失禁が始まった
  • Daytime Conditions (昼間失禁の分類)
    • Bladder and bowel dysfunction (BBD) 明らかな神経症状が見つからない場合。ひどい場合は歴史的に Hinman syndrome と呼ばれる。
    • Overactive bladder (OAB) 過活動膀胱
    • Voiding postponement おしっこを我慢する
    • Underactive bladder 不活発膀胱
    • Dysfunctional voiding 神経的に正常な子供のうち排尿時に習慣的に筋肉を収縮させおしっこがとぎれとぎれになる。
    • Bladder outlet obstruction (BOO) 排尿時邪魔がある。
    • Stress incontinence 咳やくしゃみで少しおしっこが漏れる
    • Vaginal reflux 排尿直後に膣に入り込んだおしっこが漏れる。
    • Giggle incontinence 笑った時だけおしっこが漏れる。
    • Extraordinary daytime only urinary frequency 昼間だけ頻繁におしっこに行く。少ししか出ない。
    • Bladder neck dysfunction 膀胱口の異常
  • Comorbidity 併存症
    • 特に関連性が高いのは、尿失禁の子どもの20~40%、昼間の尿失禁の30~40%に影響を与える行動障害です。これには、外向性障害(ADHDおよびODD)および内向性障害(うつ病および不安障害)が含まれます。
  • Treatment 治療法
    • Pharmacological therapy, surgical therapy 薬や手術
    • Neuromodulation 電気や化学物質で神経を刺激する
    • Alarm treatment 失禁の直後に音などで知らせる
    • Urotherapy 様々な非侵襲的治療
      • Information and demystification 症状の説明
      • Instruction 正しい排尿排便習慣、姿勢
      • Life-style advice バランスの取れた水分摂取やカフェインをやめる事、定期的な排便排尿。
      • Registration 症状や排尿習慣の記録
      • Support and encouragement

長女の怪我の記録その6(185日目)

娘の現在の症状について、私の見立てを記録しておく。怪我が原因で心に傷を負い、頻尿になったというのが主要な症状。最初は夜や不安の時のように特定の条件で尿意を訴えていたが、現在は条件に関わらずトイレに行った後の尿意が一番酷く、マイクラYoutube で紛れると次第に薄まる。寝ている時のおねしょや頻尿は無い。表面的な症状は以下のとおり。

  • 尿意切迫感 (Urgency)
  • 頻尿 (Increased urinary frequency)
  • 昼間頻尿 (Increased daytime urinary frequency)
  • 排尿後尿意切迫感 (Post-micturition urgency)
  • 聴覚過敏 (Hyperacusis)
  • 広場恐怖症 (Agoraphobia)
  • 社交不安障害 (Social Anxiety Disorder)

表面的な症状を見ると、過活動膀胱 (Overactive Bladder Syndrome / OAB) というのが当てはまる。『過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]』p233 によると、1日8回以上の頻尿または月1回以上の切迫性尿失禁を過活動膀胱と定義した場合、本邦の小学生の 17.8% に認められている。ただ、この分類はざっくりしていて、ここでは関係無いおねしょが結構含まれているようだ。心因性という意味では、ADHD との合併が多いらしい。

治療法としては行動療法、抗コリン剤、に加えてβ3受容体作動薬が保留で推奨されている。行動療法には定時排尿などが含まれるが、おねしょの無い娘には関係無い。泌尿器科の医師からは、膀胱が大きくなるように水分摂取を増やすよう指導されている。薬物療法として、最初ベシケア(ソリフェナシン/抗コリン剤)が処方されていたが、今はべオーバ(ビベグロン/β3受容体作動薬)に変更された。ガイドラインによるとβ3受容体作動薬はまだ新薬なので推奨グレードは保留となっているが、医師によると小児に100件以上投薬し副作用も無く効果を認めているとの事だ。残念ながら娘の場合尿意には目立った効果が無いため、あと2週間たって改善されない場合投薬をやめておもらし量に変化があるか確認してみる予定だ。

『臨床泌尿器科 VOL.22 NO.2』p132 によると、尿意の発生について2つの経路がある。

  • 1つ目は太く有髄のAδ線維で、排尿筋による膀胱の受動的な伸展および能動的な収縮に反応する。排尿筋による微小収縮(microcontrantions)が膀胱知覚亢進に関わっている可能性がある。蓄尿期に交感神経が活動し、βアドレナリン受容体を介して膀胱が弛緩する。β3受容体作動薬によってβアドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進できる。

  • もう一つが補足無髄のC線維で、ネコによる検討では膀胱内の刺激物質や炎症を尿路上皮で感知するが、ラットではAδ線維と同様膀胱の伸展に反応する。尿路上皮に存在する多くの受容体やイオンチャンネルがC線維の活動を亢進する可能性がある。尿路上皮で自己分泌されるアセチルコリンを抗コリン剤で抑制し、尿意切迫感を緩和出来る。

なお、『小児科診療 Vol.74 No.1』p61 によると、心因性頻尿に対しては抗コリン剤などの投薬は有効とする報告と無効とする報告があり、なかなか気が重い。

泌尿器科の医師の診断では尿意自体は心因性によるものなので、平行して精神科の診察も受けている。現在の診断では自閉症スペクトラム(ASD)ということになっている。ただ、個人的に『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』と突き合わせると ASD の条件である「反復的な運動」、「同一性への固執」、「執着する興味」というものが薄く、「感覚刺激に対する過敏さ」もつい最近の話なので診断には疑問を持っている。

怪我の後発症した事から心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic Stress Disorder) なのかなとも思ったが、フラッシュバックは起こっておらず、ジワーッと常に不安がある状態なので違う気もする。

不安でおしっこに行きたくなるのはよくある話だと思うが、その割に精神疾患の観点から頻尿に言及している文献をなかなか見つけられずにいる。似たような症状の子供がいればぜひ治療や経過を知りたい。

参考

長女の怪我の記録その5 (182日目)

色々悪条件が重なり、長女の調子は酷くなってしまっている。

まず1月12日に神経科での検査があった、これは知能や精神的な障害の程度を測るものだが、結構過酷な質問が出たらしい。一般的な知能検査はともかく、友達に嫌な事をされたらどんな返事をしますかと言った質問がかなり負担だったらしく、予定の時間を大幅にオーバーして二日間もかかった。

次に1月22日に妻の友人に会いに一時間程ドライブしてある公園で待ち合わせたのだが、そこで調子を悪くして結局訪問する事は出来なかった。

さらに、2月6日ごろ次女の風邪をうつされてしまい一週間ほど夜中に咳が出てしまったのがダメ押しとなった。それまでは自宅で落ち着いている時にモジモジ(尿意)を感じる事はなかったのだが、悪化して一日中モジモジになってしまった。

そこで2月21日に再度泌尿器科を受診し、ベシケア2.5mg を処方してもらった。ベシケアは頻尿が始まった当初に処方されていたが、原因が精神的なものだと診断されていたので飲むのをやめていた。それが今回症状が酷くなったために藁をもすがる気持ちで再度処方してもらった。

一週間飲んで効果がなくベシケアを5mgに増やしたがそれでも効果がない。そこで次にべオーバに変更した。これらの頻尿の薬には便秘の副作用があるので、毎日うんちの記録をつけたが、幸い便秘にはなっていない。ただべオーバでも目立った効果は無いので、先日再度泌尿器科で診てもらった。

先生が言うには、この症状は心理的なものなので尿意は薬では治らないが、おもらしの量から考えると薬自体は効いているとの事だった。それよりも尿量が全体的に少なく、膀胱が小さくなっている可能性があるため、水分を取るようにと言われた。体重 1kg につき一日の尿量が 35ml 必要なのだが、全然足りていない。という事で、水分を多く取る事と、うんちの記録と、おもらしの記録(生理パットをつけて重さを測る)を継続している。

精神科は具体的なアドバイスを何もしないので気休めかなと思っている。

モジモジ対策としては、相変わらずマイクラYoutube を活用している。しばらく経つと本当にモジモジが消えるらしく不思議だ。ただ、症状が酷くなってしまったので今では食事中もずっと Youtube をつけて、寝るときも Youtube をつけているので心が痛む。Youtube でも主にマイクラの番組を見ている。

幸いたまにお友達が来てくれるので、その時は結構楽しそうにしている。友達が来ても結局マイクラをするのだが、今まで怖れていて出来なかったサバイバルモードで遊べるようになったり、一人ではしない遊びをするので刺激になる。

あと、昼間僕がジョギングをする時に長女に自転車で30分程付き合わせているが、そのときもあまりモジモジが気にならないようだ。本当にかわいそうなので早く治りますように。

からくり計算器の制作や発表をちょっとお休みするはなし。長女の怪我の記録その4

一応記録のために書いておきます。3Dプリンタやレーザーカッターを購入して、いよいよ本格的に制作するぞ!と意気込んでいたのですが、やっぱりしばらく作品の制作や発表をお休みする事にしました。実は五ヶ月前に小学二年生の長女が大きな怪我をしまして、幸い怪我自体は治りつつあるのですが心の傷が未だ癒えず学校へ通えない状況が続いております。次女にも悪影響が出始めており、こんな状況でなかなか制作に集中する事ができなくなってしまいました。心の問題について素人である私が長女の助けになる気もしないですが、藁をもすがる気持ちで色々調べたり試したりしています。

一番深刻な症状は夜間や人混みの中(と言っても五人くらい)や音楽を聞いた時に現れる心因性頻尿です。怪我の抜糸を行った日の夜から発生して今まで酷くなる一方で、生活の上で出来る事が少しずつ少なくなっているのが悲しい。。。すでに泌尿器科で異常が無いことは確認しており、様々な書籍や『DCM-5 精神疾患の分類と診断の手引』というマニュアルを入手して当てはめるとパニック障害というのが近いと思うのですが、精神科の先生の診断は自閉症スペクトラム症候群(ASD)という事です。まあ怪我の後で豹変した娘しか見たこと無いとそういう診断かもなという感想です。どちみち病名には意味が無く、漢方以外年齢的に処方出来る薬も無いので、自然治癒に頼るしか無いらしいです。

当初は夕方の限られた時刻にしか起こらなかった頻尿も、現在ではトイレに行った後は必ず一定時間発生している状況ですが、唯一の救いがゲームのマインクラフトです。なぜかマインクラフトをしている時だけは落ち着いています。ひたすらクリエイティブモードで家を作ったり罠を仕掛けたりしています。私もたまに付き合うのですが、すぐ 3D 酔いになるので長時間はキツイ。流石に一日中マイクラだけやってるわけにも行かないので、他にも出来る遊びを見つけたいです。

現在の治療方針としては、とにかく子供と遊んであげて安心してあげる以外無いとの事ですが、親としてはやっぱりそういう気休め以外の助ける方法も知りたい。なので長女と同じような、

  • 大きな怪我をした。
  • 怪我が治ると同時に頻尿発生。
  • 暗い場所、トイレの後、人混み、音に反応して頻尿。
  • 学校に行けなくなる。

という症状から回復した子供の症例を探しています。

2022年の終わりに。

スキマ時間に来年作りたい物を書く。大垣ミニメイカーフェアで間に合わなかった紙製論理回路の試作が思ったより評判がよく自信を持った。これは半加算器の一桁目に使われる排他的論理和と呼ばれる論理ゲートだけを紙で作ったもので、まだ紙バネの調整がうまく行かずちゃんと動かなかったのだが想いは伝わった。排他的論理和さえできれば二桁目の論理積は簡単なので、半加算器はできたも同然だ。

来年中に大量生産できるほどしっかりとデザインできるか自信無いけど、紙でできた半加算器のキットとはこういう物ですというのが明確に分かる物は作りたい。そしてキットと共に、自分がなぜこんな物を作っているのかという事を筋道立てて説明する文書を付ける。

自分の目指す物について、直感的には分かっているし、部分部分で実現するべき小目標はあるつもりなのだが、それを繋げるストーリーをまだ構築できていない。例えば、半加算器、全加算器と作ってなぜ Dr.Nim なのか? Dr. Nim 以外に作るべき機械は何なのか? チューリングマシンを目指すべきなのか? 作りかけの圧力式計算器はどうする? などのバラバラな活動を説明できるようになりたい。

また、結構色々調べた未発表のメモも整理しないと忘れてしまってもったいない。DigiComp などの過去の玩具や論理ピアノなどの電子計算機以前の真面目な論理機械、はたまた Phun やマイクラなどバーチャル世界の物理論理回路など、色々面白いネタはある。

そんな感じでスキマ時間が終わったのでまた書きます。