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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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長女の怪我の記録その6(185日目)

娘の現在の症状について、私の見立てを記録しておく。怪我が原因で心に傷を負い、頻尿になったというのが主要な症状。最初は夜や不安の時のように特定の条件で尿意を訴えていたが、現在は条件に関わらずトイレに行った後の尿意が一番酷く、マイクラYoutube で紛れると次第に薄まる。寝ている時のおねしょや頻尿は無い。表面的な症状は以下のとおり。

  • 尿意切迫感 (Urgency)
  • 頻尿 (Increased urinary frequency)
  • 昼間頻尿 (Increased daytime urinary frequency)
  • 排尿後尿意切迫感 (Post-micturition urgency)
  • 聴覚過敏 (Hyperacusis)
  • 広場恐怖症 (Agoraphobia)
  • 社交不安障害 (Social Anxiety Disorder)

表面的な症状を見ると、過活動膀胱 (Overactive Bladder Syndrome / OAB) というのが当てはまる。『過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]』p233 によると、1日8回以上の頻尿または月1回以上の切迫性尿失禁を過活動膀胱と定義した場合、本邦の小学生の 17.8% に認められている。ただ、この分類はざっくりしていて、ここでは関係無いおねしょが結構含まれているようだ。心因性という意味では、ADHD との合併が多いらしい。

治療法としては行動療法、抗コリン剤、に加えてβ3受容体作動薬が保留で推奨されている。行動療法には定時排尿などが含まれるが、おねしょの無い娘には関係無い。泌尿器科の医師からは、膀胱が大きくなるように水分摂取を増やすよう指導されている。薬物療法として、最初ベシケア(ソリフェナシン/抗コリン剤)が処方されていたが、今はべオーバ(ビベグロン/β3受容体作動薬)に変更された。ガイドラインによるとβ3受容体作動薬はまだ新薬なので推奨グレードは保留となっているが、医師によると小児に100件以上投薬し副作用も無く効果を認めているとの事だ。残念ながら娘の場合尿意には目立った効果が無いため、あと2週間たって改善されない場合投薬をやめておもらし量に変化があるか確認してみる予定だ。

『臨床泌尿器科 VOL.22 NO.2』p132 によると、尿意の発生について2つの経路がある。

  • 1つ目は太く有髄のAδ線維で、排尿筋による膀胱の受動的な伸展および能動的な収縮に反応する。排尿筋による微小収縮(microcontrantions)が膀胱知覚亢進に関わっている可能性がある。蓄尿期に交感神経が活動し、βアドレナリン受容体を介して膀胱が弛緩する。β3受容体作動薬によってβアドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進できる。

  • もう一つが補足無髄のC線維で、ネコによる検討では膀胱内の刺激物質や炎症を尿路上皮で感知するが、ラットではAδ線維と同様膀胱の伸展に反応する。尿路上皮に存在する多くの受容体やイオンチャンネルがC線維の活動を亢進する可能性がある。尿路上皮で自己分泌されるアセチルコリンを抗コリン剤で抑制し、尿意切迫感を緩和出来る。

なお、『小児科診療 Vol.74 No.1』p61 によると、心因性頻尿に対しては抗コリン剤などの投薬は有効とする報告と無効とする報告があり、なかなか気が重い。

泌尿器科の医師の診断では尿意自体は心因性によるものなので、平行して精神科の診察も受けている。現在の診断では自閉症スペクトラム(ASD)ということになっている。ただ、個人的に『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』と突き合わせると ASD の条件である「反復的な運動」、「同一性への固執」、「執着する興味」というものが薄く、「感覚刺激に対する過敏さ」もつい最近の話なので診断には疑問を持っている。

怪我の後発症した事から心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic Stress Disorder) なのかなとも思ったが、フラッシュバックは起こっておらず、ジワーッと常に不安がある状態なので違う気もする。

不安でおしっこに行きたくなるのはよくある話だと思うが、その割に精神疾患の観点から頻尿に言及している文献をなかなか見つけられずにいる。似たような症状の子供がいればぜひ治療や経過を知りたい。

参考