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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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Maker Faire Tokyo 2019 「からくり計算器」ご報告

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からくり計算器 (MFTokyo2019)

「1 たす 0 は何でしょうか? 1 です。」

「へー!」

「1 たす 1 は何でしょうか? 2 です! これを 2 進数でイチゼロと書きます。」

「ほー!!!」

先日の Maker Faire Tokyo 2019 の「からくり計算器」ブースで繰り返し行われたやり取り。いま冷静に思い出すと変な会話です。当日も自分で言っててずーっと変だと思ってました。確かに自分で興味があって作り始めたからくり計算器なので、半加算器とか全加算器について知識のある人が仕組みやデザインに興味を持って持って頂けるのは想定どおりなのですが、「1 たす 1 は 2 です」という「計算が機械で可能である」その基本的な部分に感心されるとはどういう事?!

これは大げさな表現では無く、多くの方に文字通り「感動した」と言って頂きました。「感動」ってこんな時に使う言葉だったっけ?と内心戸惑いながらも、もしかしたら自分も半加算器を初めて知ったときは感動(?)したのかも知れない、もしかしたら自分は「計算が機械で可能である」という驚きをもはや忘れてしまったのかも知れないと思ったりします。もしも自分の作品が、当たり前過ぎて忘れていた驚きを思い出すきっかけになったとしたら、これほど嬉しい事はありません。

京都に続いて二度目の展示となる今回、出来るだけ多くの時間をお客さんとの対話に使いました。話す内容はワンパターンですが、映画『男はつらいよ』の寅さんの如く、お客さんの受けるポイントを探りながら声を出していると、我ながらすごい鉱脈を見つけたのでは?とじわじわ思えて来ました。

「からくり計算器」は決してハイテクではありません。どのコンピュータよりも機能が低く、技術的にも多分数百年前でも作れた物です。そして実現している内容は人類が数を発明してから変わらない知識である「1 + 1 = 2」が出来るだけです。なのに人々はどういうわけか面白みを見つける事が出来るのです。と言うことは、数百年前の人類に見せても、数百年後の人類に見せても、やっぱり面白いはずです。まあ確かに誰にとっても面白いというわけには行きませんが、少なくとも Maker Faire に来るような特殊な性癖の人々にとっては本当に面白いらしいのです。

また Maker Faire での展示で、自分の中の隠れた偏見に気付かされました。制作中に無意識に想定していたターゲットは、自分のようなオタク成人男性でした。展示中も無意識に男性と女性で説明の仕方を変えてしまうのですが、実際には男女での反応の違いはありませんでしたし、説明を工夫すれば小学生にも十分に楽しんで貰えました。

このように嬉しい誤算が沢山の良い機会となり、今後の活動のヒントも沢山ありました。特に多くの方に自分でも欲しいと言われたので、なんとか量産したいと思ってます。阿部さんから『メイカーとスタートアップのための量産入門』の著者の方を紹介して頂き、早速本を読んで勉強している所です。また、ペーパークラフトにして誰でも型紙をダウンロードして作れるようにするのも良いかなとも思ってます。

今回展示内容は以下です。京都で展示した内容 https://propella.hatenablog.com/entry/2019/06/10/233345 に加えて、木製加算器を改良した他、説明用マンガを追加しました。