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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

騙されない世の中を作る方法。

最近引っ越しをしようと思ってアパートを探している。三年前にここへ越して来た時は右も左も分からなくて、同僚にあちこち電話をかけてもらってアパートを探した。最近ではなんと google map で好きな場所を表示して、apartment と入力するだけで、地域のめぼしいアパートの場所と値段がずらりと表示される。残念ながら古い情報が混ざっててリアルタイムとはいかないようだけど、地域の大体の相場が分かるというだけでも素晴らしい。

しかしアパートの場合これだけで決めるわけにはいかない。実際に部屋をみないと分からない事は沢山あるし、近所の感じなんか住んでみてやっと分かる事もある。残念ながらそう言う事はまだウェブでは分からない。こういう所はホテル探しとはちょっと違う。最近ではウェブにホテルのレビューが詳しく載っていて、昔に比べて随分自分の希望にあう場所を見つけやすくなった。

ホテルとアパートはどう違うのだろうか?ホテルと比べてアパートは物件あたりの利用者の数が少ないので評判を聴く機会も少ない。大家さんに比べて借りる人は圧倒的に情報が少ない状態で契約する事になる。借りる人は騙されるのは嫌なのでアパート探しには時間がかかる。アパート探しには時間がかかるので、どうしても世の中には無駄な空室が出来る事になる。

世の中にはこのように、情報が少ないために生まれる無駄が他にも色々ある。代表的なのが雇用で、この場合雇う側も雇われる側もお互い情報が不足しているので慎重に選ばなくてはいけない。そのため折角生まれた雇用を上手く行かす事が出来ず、失業率は絶対ゼロにはならない。また、離婚にコストがかかる社会での非婚率も失業と同じ考え方が出来るらしい(これは情報とは関係ないので繋がりがよくわからないけど)。こういうのをひっくるめて「摩擦」と呼んで研究しているピーター・ダイヤモンド、デール・モルテンセン、クリストファー・ピサリデスが今年のノーベル経済学賞を受賞した。

さて、私はこの研究についてまだ全然勉強していないのだけど、興味深いのはテクノロジーによってこの摩擦を減らす事が出来るかだ。言い換えると、ボッタクリや無駄の無い社会を作る事が出来るかどうか。私はネットでこの摩擦を解消する事がこれから可能だし、重要になると思う。

直感的には大量に同じ物が売っている物ほど摩擦が少なく、少ない物ほど摩擦が高い。だからそういうマス商品から情報化を始めてだんだん少量商品やサービスを目指せば良い。最近では本や電化製品のネットの情報はかなり信頼出来ると思う。しかしチェーン店でないレストランの情報はまだまだ足で探す部分が大きいし。病院選びやアパート、就職のレベルになると全然未踏の領域で、これから面白いビジネスが生まれるのではないかと思う。

このような商品の場合、ネットの無料サービスが広告で成り立っているのが足かせになる。広告で運営されている限り正確なレビューは期待出来ない。例えば大家さんや企業がわざわざ自分の悪いレビューが載っているサイトに広告を出すだろうか?これが沢山就職サイトがあるのにブラック会社が無くならない理由だろう。

なぜアパート、病院選び、就職のような分野で AmazonKakaku.com楽天トラベルが不可能なのだろうか。Amazon は自社で商品を売っているので、例え悪いレビューがあっても正確なレビューを維持する事で全体の売上げを上げるという動機がある。Kakaku.com では広告を出すのはメーカーではなく販売店なので、これも一つの商品の悪いレビューがあっても全体の信用を維持した方が利益が高い。

これが例えばリクナビになると広告主は直接の雇用主なので、サイト全体の情報の正確性を維持する動機が全く無いという事になってしまう。このあたりが無料サイトの限界だろう。逆に言うと、病院選び、不動産、就職から間接的に利益を得る方法があれば、このような一見騙し合いが不可欠に見える分野でもネット上で正確な評価が可能になるはずだ。私は思い付かないけど思い付いたら教えて下さい。

参考