言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

マクロ経済の面白い部分

こないだ阿部さんに聞かれてちゃんと答えられなかったので、今まで読んだ中でマクロ経済のどこが面白いか書きます。特に、長期、短期、裁定取引についてです。経済の面白い所は、人間の振る舞いでありながら人智を超えた振る舞いをする所です。

経済で長期という言葉が使われるとき、人々が十分損得にうるさく資源が流動的で理想的な状態を指します。その時に世界の富は最も効率よく分配されます。なぜなら、もしも富の分配に偏りがあって、妙に物が高かったり安かったりすると、その差を利用して商売が出来ます。そう言うのを裁定取引と言います。裁定取引の競争で結局値段はちょうど良い高さに落ち着きます。よく気をつけないと行けないのが、効率よく分配されるという事はみんなに平等に分配されるのとは違うという事です。社会は得意な事を得意な人がする事によって最大限の効率が産まれるので、必要な所に必要な物が分配されます。

これは善悪や倫理とは関係ないプロセスです。熱いお湯と冷たい水を混ぜると勝手に混ざってぬるくなるように、経済は勝手に効率化する方向に動きます。長期的な経済を制御する要素は、技術と資源、人口等です。人為的に政策で長期の経済を制御する事は出来ないです。例えば補助金や関税を使って産業を保護しても駄目です。何故かは長くなるので書かないですが、長期的な経済は、技術革新や資源の発見や疫病なんかが無いと変わりません。

しかし実際には経済はこのようには動きません。世界に変化が起り富を別な割合で分配しないといけなくなっても、人は急には動けません。この状態を短期と呼びます。この時には経済は最適で無いので不況になります。ある場所で人が余って失業者が増えたり、サービス残業をしても仕事が終わらない事が起こります。先ほどのお湯の例で言うと、お湯にトロミがあって新しく冷たい水を注いでもなかなか温度のバラツキが取れない状態です。短期的な経済は政策によって制御出来るそうです。政策によって長期的な経済は制御出来なくても、短期的な歪みを早く和らげる事が出来ます。

まとめると、長期的な経済は資源が最適に分配される方向に動き、技術や資源や人口によってだけ変化する。短期的な経済は現状を維持しようとして長期的な経済との間に歪みを生じる。その歪みが不況となって現れる。という事です。

この話から色々教訓が産ます。例えば世の中でけしからん事があったら、どうしたら良いでしょう?もしも経済の趨勢から行ってその事が必然だと思ったら望み薄です。あきらめて下さい。正義や倫理や人情や愛で経済に逆らう事は出来ません。逆に経済の流れから行ってもあり得ないと思ったらチャンスでしょう。けしからん事を直すだけじゃなくて、そこから利益を得る事も出来ます。経済の歪みは裁定取引によっていつか正されます。

こう書くと、人生とは経済ばかりでは無いのだ。人生には経済よりも大切な事があり、経済によって行き方を変えるなんてあり得ないと思われるかも知れません。その通りです!経済は正義とも倫理とも人情とも愛とも全く関係が無く。効率だけを追い求める得体の知れない物です。だから面白いのです。だいたい人間以外の物はなんでも、正義とも倫理とも人情とも愛とも全く関係ない得体の知れない物です(あえて言えば美とは関係あると思うけど、それは別の話)。経済は人間の集合で出来ていますが、人間の集合は全然人間的では無いです。

私はただの人間には興味が無いので、このように人間の集合の血も涙も無い振る舞いを観察するのが楽しいのです。