言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

アメリカで日本のロボを観る。

ロサンゼルス・コンベンションセンターで開かれている WIRED NEXT FEST という展示会を観てきました。メディアアートのような物から真面目な発明まで、世界各国から珍しい物が沢山あつまって居ました。特に私が面白い!と思ったのは、

  • Brainball : 念力でボールを動かすスポーツ
  • Android Twin Robot Zou Ren Ti : ロボットそっくりの人間を展示
  • Wheelsurf : スチームボーイSouth Park で紹介された肛門駆動のバイクを商品化

何と言うか、夢を追って生きている人たちが沢山居る事が分かってよかったです。でも一番感動したのは、Chroino and FT という日本のロボットでした。これよく雑誌で見るのでどういうものかは知ってたのですが、作者さんが動かすのを実際に見たのは初めて。

私は昨今のロボットブームをずっと冷めた目で見ています。いわば飛行機を作るのに鳥の羽ばたきを真似ようとしているような、またはかつての AI ブームのように人間の知能を真似たコンピュータを作るような、努力の無駄遣いをしているように見えて仕方が無いです。そこがこの Chroino and FT の、特に女性型の FT の動きを見たときに、考えを改めないといけないのではと思ったのでした。

どこが感動したかというと、FT というのは、女性の動きを真似たロボットというよりも、女性の動きとはどういうものかを表現する為のロボットだという事です。ここは妄想入りで二つの例を挙げます。一つは写真と絵画の違いです。写真は光線を平面に映し出す技法ですが、絵画は人間がどう物を見るかを映し出す技法です。もう一つは演劇についてです。自然な演技とは舞台の上でただ普段どおりに振舞う事ではないです。舞台の上で、他者の視線の中で振る舞いとは何かを再構築する必要があります。FT の動作は人工的な物です。それで居て、人はそこに女性的な動きを投影するのです。

取り囲む観客の感嘆の声も、他のロボットに対しての物とは全然種類の違う物でした。他のロボットへは「凄い技術だ!」という驚きの声が聞こえるでしょう。FT を観た反応というのは、まるで幼い子供が親の真似をさりげなくやって見せた時のような、もっと感情をくすぐるような物に感じました。

FT は動き始めて物の 0.5 秒ほどで「わあ!」という感嘆の声を呼び起こし、場の空気を一瞬に変えたのです。