言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

タマムラ

長らく続いたニート生活に終止符を打とうと、僕はようやく重い腰を上げた。市内にある小さな会社に電話をかけ、面接の約束を取り付けたのだ。約束の時間まではまだ間があるが、僕は早めに家を出て、市内に向かう列車に乗った。

しばらく経つと、どうも乗った列車がおかしい事に気がついた。周りの景色がなんだか田舎っぽい。間違えて逆向きに乗ったのかな。このままでは面接に間に合わないかも知れない。僕はあわてて窓から飛び降りた。とにかく遅れを取り戻さなければならない。しばらく歩くと、見慣れた新幹線の高架があった。何とかあの新幹線に乗れたら早く市内にたどり着けるのに。

ふと、目の前に小さな猫がいる事に気がついた。昔飼ってたネコのタマムラだ。死んだと思っていたのに何故ここにいるのだろう。タマムラはあせる僕の心を見透かしたように、ここに乗れと背中を向けた。タマムラの体はだんだん大きくなり。ふかふかの背中に僕は飛び乗った。タマムラはそのままひょいと跳ねると、向こうからやってきた新幹線の上に飛び乗った。

しかしそううまく事は運ばなかった。市内に向かう途中でトンネルを抜けなくてはならない。大き過ぎるタマムラは入り口でつかえてしまい、そのまま跳ね飛ばされた。気がつくと、トンネルで脱線した新幹線が炎上しているのが見えた。

僕は発見者の一人として取調べを受ける事になった。担当刑事のナカノさんとは初め気軽に接していたのだが、すぐに僕が発見者から重要参考人となった事を知らされた。新幹線に乗っていた被害者の一人として、今朝喧嘩して分かれた父が発見されたのだ。こんな事してる場合じゃないと思っていたらまたタマムラが現れて、気がつくと僕は市内に立っていた。

あとで聞いた話によると、ナカノさんは取調室の隣のシャワーで血まみれとなって発見されたそうだ。頚動脈に鋭い二本の傷があって、死因は出血過多による物だった。

とにかく何とか間に合ったようで、僕はテナントビルの一角にある面接先に訪れた。名を告げると、女の子がすぐに社長室に案内してくれた。社長室のドアを開けるときにふと足元を見ると、タマムラがいた。

という夢を見た。