言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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祈り

今年の年末も大阪の実家で過ごした。家に帰るとまず墓参りに行かなくてはならない。前回墓参りをしたのは地震の後で荒れ果てていたが、半年で結構きれいになっていた。いつものようにバケツの水で墓石を洗い花瓶に花を生けコップに水を備える。それから母が手を合わせ孫の前で、

「おじいちゃん、今日は可愛い孫たちが来ました、みんなが元気でありますように。。。」

とか何とか墓に語りかけた。それを聞いた四歳の双子の次女が突然、

「待って待って、私もやる!」

と叫んだ。一体何事だと一同ざわめいたが、

「おおかみさんと楽しく遊べますように、美味しくおかしが食べられますように。〇〇できますように。勝ちますように。」

とか言いながら次女は良くわからない事を祈りだした。実際はもっと日本語にもなっていない不思議な事を祈っていたが、あまりにも意味不明で僕は正確な文言を覚えられなかった。双子の長女も真似をして同じように不思議な祈りを始めた。

意味不明ながらもなぜか空気を読んで孫たちが祈ったという事に、母は大変感銘を受けた。

翌日は元旦だった。おせち料理を前に家族全員が揃った。頂きますをしようという段になり、今度は母は孫たちにお正月の挨拶をさせようと思って、ちょっと大げさに挨拶をしてみせた。しかし、今度は双子はあまりにも腹を空かせていたらしく完全に無視だった。なかなか思い通りには行かないものだ。

それから双子たちは度々お祈りをするようになった。僕が双子を連れてよく行く公園への道にお地蔵さんの祠がある。双子は僕にお賽銭をねだり、コインをチャリンの放り投げてから「良い夢を見ますように」とか不思議な事を祈りだす。

その祠に知らないおばあさんがたまたまお参りにやってきた。双子の祈りを聞いていたらしく「良かったね、良い夢を見られると良いね!」と声をかけて頂いた。双子は大変満足そうだった。