言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

iPad の発売前夜に Kindle 版 New York Times が値上げ。

昨日の夕方とあるメールが来ました。私が Kindle で購読している New York Times が値上げするというという話です。いままで 14 ドルだった物が一挙に 20 ドルに跳ね上がります。そんな阿呆な!この件が iPad 発売と関係があるかどうか分かりませんが、似たような話は他の電子書籍でも起こっていて、いままで Amazon によって 10 ドル以下に押さえられていた新刊の小説が今や出版社によってまちまちに高い値段が付けられています。

どういう理屈でこういう事が起こっているのか知ってる人いないでしょうか?

中学生のころ習った値段決定のしくみは、非常に単純で理にかなったものです。売る人より買う人が多ければ高くなり、売る人より買う人が少なければ安くなる。この理屈は今でも普通の商品、アイスクリームやハンバーガーなんかでは成り立ちます。アイスが高いと思ったら別の安い店にみんな買いに行くので、結果としてそれなりの値段に落ち着くからです。

このメカニズムは電子書籍の値段決定にも上手く働くでしょうか?例えば 20 ドルの New York Times が高いからと言って 10 ドルの Los Angeles Times を選ぶでしょうか?新聞の選択にも自己表現みたいな所があるので、簡単に変えられない人も多いと思います。

新聞が紙の形をしていたら、同じような紙は同じような値段じゃないと納得しないかもしれません。しかし値段が純粋に情報だけの時はどうでしょう。商品が物質という呪縛から逃れた時、値段に納得する根拠はどこになるのでしょうか?

実は新聞については結構これは古い議論だそうです。昨年末の The Economist の記事によると、19 世紀の電信の発明は新聞業界の存亡にとって大事件だったそうです。それまでの新聞は遠くの特派員がゆっくり何日もかけて持ってくる情報を載せる他、今のブログがやってるみたいに現地の新聞記事をコピペするような事も行われていました。もしも電信が普及してみんなが遠くの情報に直接触れると、ただ情報を垂れ流すだけの新聞には意味が無くなる!新聞が生き残るためにはもっと分析記事や主張を前面に出さなくてはならない!と言われていたそうです。

しかし当時の新聞を救ったのはもっと実際的な要因でした。今で言うラストワンマイル問題、世の中の全員が直接電信で海外から情報を受け取るわけにはいかないので、結局自宅に毎朝届けられる新聞の便利さにかなうものは無かったというわけです。

19 世紀と現在の新聞の違い、アイスクリームと新聞の違いは二つあります。どれだけ売っても減らないので供給に制限が無い事と、家に届けるまでの運搬にも制限が無い事です。これが不思議な値上げの原因になってる気がします。iPad というライバルが現れるのに Kindle の新聞の値段が上がるのは他の商品では考えられない事で、きっと何か新しい理屈があるんじゃないかと思います。知ってる人がいたら教えてほしいです。