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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

富士塚

六本木ヒルズの展望台で富士山を眺めた後、宿に到着すると、廊下にでかでかと富士山のポスターや地図が何枚も貼ってあった。再び富士への想いが蘇り、とはいえ今から登山はしんどすぎるので、一度行ってみたいと思っていた富士塚に足を運んだ。私が向かったのは現存する富士塚の中で特に古いと言われる千駄ヶ谷から程近い鳩森八幡神社

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神社に近づくとどこからとも無く児童の嬌声が聞こえて来る。なんと境内で無数の園児がお遊戯の時間中だった。おそらく、併設の幼稚園がこの時間は神社を使っているのだろう。歌い踊りまくる園児達と落ち葉を拾う先生達。塀の向こうではスーツを着たサラリーマンが足を急ぐ。そしてその前景に、にょっきりと聳え立つ富士塚があった。

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富士塚というのは江戸時代の信仰で、神社に人工の富士山を築造し、本物に登れない人々が代わりに参詣するために作られた物だ。私の富士山のイメージは、荒涼とした死の世界だが、千駄ヶ谷の富士山は街に溶け込み、盆栽のような趣で大変可愛らしい。とはいえ、ところどころ軽石を使いそれなりに富士山らしさを演出している。富士塚を始めたのは二百年前の植木職人とあるが、この莫迦莫迦しい企てを広めた江戸っ子達の遊び心には感服する。

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富士山と人との関わりは非常に興味深い。

本物の富士に登ると(http://d.hatena.ne.jp/propella/20060629/p1)、登山客の為に丁寧に人の手入れが行き届いている事に関心する。交通の便も良いし山小屋があちこちにあり初心者にもとっつきやすい。しかしでそうした人工物は、こないだまで活火山だった死の世界の上に危ういバランスでちょこんと乗っかっているだけで、継続したメンテナンスが無ければ瞬く間に文字通り風化してしまうだろう。こんな荒涼とした土地で登山道を手入れする熱意はどこからやってくるのだろう。

一言でこれが文化だと言ってしまうと簡単すぎる気がする。六本木ヒルズの富士。ビジネスホテルの富士。鳩森八幡神社。沢山の富士に囲まれた今回の旅行だった。

参考: http://www.sukima.com/10_shinjuku/01hatomori.htm