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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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上野美術

まず上野の森美術館ジグマー・ポルケ展へ行く。彼はドイツの画家で、画面上をドットで覆う幻想的な作風が特徴だ。絵の具をぶちまける謎めいた作品がある一方で、魔方陣をモチーフにした構成的な物。キャンバスの代わりに張り合わせた布の上に描いた可愛らしい物もあったりして楽しい。

モーニングの人気漫画「へうげもの」に影響されて、陶器を見ねばと思い東京国立博物館へ。伊万里と京焼きの展示。残念ながら、どちらも「へうげもの」の舞台である安土桃山とは関係無い。伊万里は九州の窯元で、17世紀から中国の影響を受けて磁器を制作している。中国の鎖国政策を受けてヨーロッパ人の為に中国製品のフェイクを作ってみたり、ヨーロッパ人の好みに合わせて金属の台座のついた徳利を作ったり、アメリカでよく見る妙なニッポンの雰囲気がこんな頃からあったのかと感慨深い。そんな中でも技術の洗練は素晴らしく、鍋島と呼ばれる18世紀の作品は相当モダンな感じがした。

わざとこういう展示の構成にしたのだと思うが、歴史を軸にした伊万里の展示と対比して、京焼きは作家性を前面に出していた。茶道で使われるためか、京焼きの方はかなり突飛で自由な作風だ。茶道は知らないので一体何に使われるのか良くわからないが、ほら貝の形に妙な模様をつけた物や、花の絵の輪郭がそのままお皿の輪郭になってる物なんかが面白かった。でも見かけの変化は単なるバリエーションでしかないわけで、根本的なイノベーションのある伊万里の方がかっこよく思えた。

磁器が京都で作られるようになったのは伊万里よりも後の事だが、磁器は伊万里で大陸の影響を受けながらもずっと独自の発展を遂げていた。地方が独自性を保ったまま発展するにはどういう術があるのだろうかという問題を考える上でも、伊万里焼きは面白い素材かも知れない。

その後本館と法隆寺宝物館へ、この博物館は全部回れたためしが無い。アイヌ美術が面白かった。日本美術は6世紀の仏教伝来でそれ以前と大きな断絶があるのだが、もしかして仏教が来なくてそのまま発展していったらこんな感じだったのかなと思った。あと鷹狩りの説明の書いた巻物が沢山展示してあって、これは今で言うパワーポイント資料のような物だろう。かわいいワンちゃんに沢山説明の線が入っていて、とても面白かった。