はこだて未来大でのワークショップは、紆余曲折あってメタトイというテーマを新たに作る事となった。メタトイとは、http://d.hatena.ne.jp/propella/20041019#p2 で考えた言葉で、ある種の面白さを表現するのに使った物である。次のような物はメタトイであると言える。
- ユーザが作った音楽ツール
- ユーザが作った画像ツール
- ユーザが作ったゲーム作成ツール
つまり何でも、ユーザ自身が作ったもの作る為のツールをメタトイと呼ぶ。
普通のユーザはツールを作ったりしない。ユーザはツールを「使う」からこそユーザであり、パソコンはユーザのあらゆるニーズに合致したあらゆるツールを提供する事によってこれだけの市民権を得てきた。過去、パソコンを買った人が自分で用途に合ったプログラムを書かないといけない時代があったのも確かだが、今一般的なユーザは出来合いのワープロや表計算を利用する事が出来る。
このような傾向は、一般的な用途のみならず、ゲームライブラリや基幹業務システムと言った、自社開発が当然だった分野にまで進行している。コンピュータのプロであるソフトウェア開発の現場においてさえも、開発とは、新たに作る事ではなく、すでに出来上がっている部品を単に組み合わせる作業になりつつある。
ここから帰結する必然はなんだろうか? ツールを作るという行為はもはや必然でなく、遊びになったと言えるのではないだろうか。アマチュアレベルでツールを作成したり、コンピュータ言語を開発するという行為は決して下火になったわけではない。なぜなら、これ自体が楽しい行為だから。必然性を失った楽しい行為の事を人は「遊び」という。遊びで道具を作る事をメタトイと呼ぼう。
アラン・ケイは遊びについて語る時、"hard fun" (スポーツをしたり、楽器を弾いたり、自分自身で動くしんどい遊び)と、"soft fun"(ラクな遊び) という言い方をして、hard fun の大切さを説く。メタトイもまた hard fun といえる。メタトイは、コンピュータ自体が単なる科学技術ではなく、真剣で、且つ、豊かな精神活動、すなわち文化芸術の一分野を担うことを示す。
メタトイに必要な条件としては、メタトイを利用して複数のおもちゃが作れる事という事があるが、これだけじゃ難しいという人の為に分析的なヒントを用意する。それぞれ要素の粒度順に並び、言語理論の記号、規則、文法、意味に対応する。
- 記号: 物事を単純に表現するための別の名前や絵: トランプ、アイコン、方角。
- 辞書: 記号と意味を対応付ける: 暗号表、占い規則。
- 地図: シンボルを並べる: 迷路、楽譜。
- 目的: 遊びの目的: 絵を描く、早く着く。
と、カイヨワの競争、偶然、模擬、眩暈を適当に結びつけて作る。