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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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ERNIE: くじを引く機械・知られざる英国コンピュータ史

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外国を旅するとたまに珍しい歴史に出会えます。ロンドンの科学博物館には、有名な世界初の大規模機械計算機であるバベッジの階差機関が展示されています。そしてその隣に誇らしげに展示されているのが ERNIE と呼ばれる巨大な電気式計算機です。これは、第二次世界大戦中に暗号解読機械を制作していたアラン・チューリングを含む天才数学者チームが戦後開発した物なのですが、何とその唯一の機能は当たりくじの番号を決める事でした。

時は 1956 年、当時の英国政府はインフレーションを抑えつつ貯蓄率を上げるために妙案を考えました。国債を買った人全員に平等に利子を付ける代わりに、くじに当たった人だけに賞金を出す事にすればどうだろう。このくじ付き国債は人気を博し、当選番号を決める ERINE もキャラクター化されロンドン市民に大変愛されたそうです。

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この ERINE。単に当選番号を決めるだけならサイコロでもルーレットでも何でも良さそうですが、そこは国家事業。厳正なる当選結果を保証するためネオン管から発生するノイズを元に英国最高の頭脳と最新技術によって高度な当選番号を創り上げました。普通のコンピュータは厳密な数値を求めるために作られる物ですが、この ERINE は出鱈目な数列を求めるだけのために作られたのです。アメリカのコンピュータの歴史コーナーにはよく国勢調査装置やミサイル管制装置が置いてありますが、ここにくじ引き機械を置くあたり英国人のユーモアを感じたのでした。

懸賞付き国債は現在でも購入可能で、最新の ERNIE (四代目) はパソコン基盤サイズだそうです。