言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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船乗りたち

今日も飽きずにアフォーダンス日記です。JJギブソンによると、人間の感覚の種類をあらわす五感、見る、聞く、触る、匂う、味わう、という分類では不充分だとして、地面感覚、聴覚、触覚、味嗅覚、視覚、の5種の「知覚システム」を挙げてるそうです。五感が人間の持つ感覚器官の種類を基にしているのに対して、「知覚システム」では少し高次の、「それで本当に感じているのは何なのだろうか?」という話を扱います。そこでは視覚や聴覚と共に、地面感覚、つまり人間の環境での立ち加減を第一級の知覚として扱う。

山下残による舞台「船乗りたち」は、そんな地面感覚に真っ向からぶつかり合うすごい作品でした(比喩じゃなくて、ほんとに、そのままです)。四角の甲板と四人の演者による対称と非対称。荒れ狂う波の上で飛び跳ねる金魚鉢、そして希望むなしくノイズ交じりの音楽を奏でる電気の波のフラクタル。ばったんごっとん、ぎしぎしと不気味に、そして暖かく鳴り響く丸太。波に揺れているのは舞台なのだろうか、それとも私たち観客の方なのだろうか?

救いようの無い荒々しい繰り返しの中で、時折観客席からくすくすと細波のような小さな笑いが起こります。漆黒の舞台の闇から、ふと一瞬なぜか水平線と青空だけの絶望的に広い空間に取り残された時のような、そんな笑いです。