姪のおみやげに Alice's Adventures in Wonderland という有名な飛び出す絵本を買ったんだけど、買ってから幼稚園レベルには難しすぎる英語である事に気づきました。それでストーリーがわからないのは悲しいので自分で訳す事にしました。内容はルイス・キャロルの原作をカットしたものです。難しいだじゃれなどは相当省略されていますがおおまかには同じ話です。アリスの話をちゃんとよんだ事が無かったのでちょうど良かったです。訳は小学生低学年でもわかるように気をつけたつもりです。よっぽど暇が出来たら完全版の訳にも挑戦してみようと思います。
ほとりにて
アリスはなんだかたいくつでした。おねえさんは水べですわって本をよむだけで、ちっともあそんでくれません。ふと本をのぞいてみると絵もおしゃべりもなくむずかしそう。「どこがおもしろいのかなあ、絵もおしゃべりもないのに?」とアリスはおもいました。
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「おっとっと、おくれちゃうよー。」とつぜん、目の赤い白ウサギがひとりごとを言いながら走ってきました。アリスはめずらしいともへんだともおもいませんでしたが、ウサギがほんとうにチョッキのポケットからとけいを出したので、アリスはおいかけてみました。のはらをよこぎり、ウサギはかきねの下の大きなウサギあなに入って行きました。ウサギあなはトンネルのようにしばらくまっすぐで、そこからとつぜん下りでした。つぎのしゅんかん、アリスはウサギにつづいておっこちてしまいました。
あながとてもふかいのか、おちるアリスがおそいのか、アリスはゆっくりまわりを見ることができました。かべはとだなと本だなでいっぱいで、あちこちにちずや絵がかかっています。アリスはどんどんどんどんおちてゆきます。いったい、どこまでおちて行くのでしょうか?
アリスがだんだんぼんやりと、ゆめをみはじめたそのときです。とつぜんどさりとおちたのは、こえだやかれはの上でした。
ふと見ると、べつのながいみちを白ウサギがいそいで走って行きます。アリスはすぐちかくまでおいかけましたが、かどをまがるとウサギはもういませんでした。アリスはながくててんじょうの低いろうかにいました。そこに「わたしをのんで」とラベルにかいた小さなびんが、小さな三つ足のテーブルの上においてありました。アリスはちょっとあじみしました。こいつはなかなかこれはおいしいです。そこですっかりぜんぶのんでしまいました。
「あれれなんだかふしぎなきぶん、ぼうえんきょうみたいにちぢんで行くよ」
アリスはほんとうに小さくなり、30センチになってしまいました。するとすぐにテーブルの下にある小さなガラスのはこが目にとまりました。アリスがあけると、こんどは小さなケーキが入っていて、「ぼくをたべて」とブドウの字でかいてあります。アリスはさっそく、そのとおりにたべてしまいました。
「もっともっとふしぎなきぶん、大きなぼうえんきょうみたいにのびて行くよ」
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そのしゅんかん、アリスのあたまはてんじょうにつっかえてしまいました。なんとアリスのせはもう3メートルです。なんてかわいそうなアリス!アリスはすわりこんで泣き出しました。
「でもなんだかはずかしい、わたしみたいに大きな女の子がこんなふうに泣くなんて」アリスは言いました。
それでもなみだは止まらずに何リットルもながれてゆき、ついに大きな池になりました。ぴちゃぴちゃと、その時とおくに足音がきこえます。白ウサギがかえってきたのです。かたてに白いかわ手ぶくろ、もうかたてに大きなうちわをもっています。
「おねがい、たすけて」アリスはだれでもいいからたすけてほしいと、おそるおそるたずねました。しかしウサギは白いかわ手ぶくろとうちわををおとし、ちょこちょこやみにきえてしまいました。アリスはうちわと手ぶくろをひろいました。ろうかがとてもあついので、うちわをあおぎながら「ほんとになんておかしな日なの!」と言いました。
そのときアリスはまたびっくり。小さいはずのウサギの白いかわ手ぶくろがアリスの手もぴったりです。「また小さくなっていくよ」アリスが立ち上がると、こんどは60センチくらいの大きさです。もううちわをもっていられません。「あそこにせまいぬけあながあるわ」アリスが言ったしゅんかん、足をすべらせ首までしお水にどっぷりつかりました。それはアリスが3メートルのときにながしたなみだの池です。
「こんなことなら泣かなきゃよかった!泣いたばちがあたったのかな」きしにおよぎながらアリスは言いました。
かわいそうなアリスはとてもさみしくておちこんでいました。でもそのときです。ぱちゃぱちゃとあの足音がとおくにきこえてきたのです。
白ウサギがきょろきょろゆっくり、おとしものをさがしにきたのでした。「おくさまに!おくさまに!おくさまにおこられるよう。いったいどこでおとしたんだろう」ぼそぼそとつぶやくのがきこえます。アリスはちょっと考えて、うちわと白いかわ手ぶくろのことだとわかりました。でももうどこにもありません。すぐにウサギはきづいてアリスに言いました。「すぐいえにかえって手ぶくろとうちわをもってこい!」アリスはとてもびっくりして、言われたほうにはしりました。
白うさぎのいえ
アリスはきれいな小さないえにやってきました。そのしんちゅうのひょうさつには「ダブリュー・ラビット」とかいてあります。
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アリスが中に入ると、そこはまどとテーブルのあるきれいなへやでした。テーブルの上には手ぶくろとうちわがおかれていました。アリスが手ぶくろとうちわをもって行こうとしたとき、小さなびんが目にとまりました。こんどはラベルがなかったけど、アリスはせんをあけてちょっぴりなめてみました。「もしかしたらもとの大きさにもどれるかもしれない。ちっちゃなままじゃいやだよ。」
おもったとおり。はんぶんものみおわらないうちに、アリスのあたまはてんじょうについてしまいました。アリスはあわててびんをもどしてました。「もうじゅうぶん。もう大きくならないで!」
あらら!ちょっとおそかったみたい!アリスはどんどん大きくなり、こんどはしゃがまなくてはいけません。それでもどんどん大きくなり、手はまどからつき出し、足はえんとつからとび出てしまいました。
そのときです。そとからこえがきこえます。「ぼくの手ぶくろをはやくよこせ!」ウサギはすぐにやってきてドアをあけようとしましたが、アリスのひじに当たってひらきません。「よーし、じゃあまどから入ってやれ」ウサギは言いました。
「そっちはだめ!」アリスはおもいました。ウサギがまどの下にやってきたとき、アリスは手をのばしてつかもうとおもいましたが、小さなひめいとわれたガラスの音だけがきこえました。
すこしかんがえたウサギは「手おしぐるまでやってみよう」と言いました。
「手おしぐるまになにを入れるの?」アリスはおもいました。すぐに小さな小石がたくさんまどに当たりました。おどろいたことに、小石はぜんぶケーキにかわります。そこでアリスはひらめきました。アリスはケーキの一つをのみこみました。するとどんどんせがちぢみます。ちょうどドアをとおれるようになったのでアリスはドアをとび出しふかい森の中へかくれました。
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アリスはまわりの草花を見まわしました。ちかくにはアリスのせとおなじ高さの大きなキノコがあります。つまさき立ちでキノコの中をみると、大きな青虫がしずかに水タバコをすっています。青虫はけだるくねむいちょうしでたずねました。「おじょうさんはだれだね」
アリスははにかみながら、「わ、わたしよく分かりません。まえみたいにぜんぜんおぼえられないの、それに10分とおなじ大きさでいられないんです!」
「どの大きさになりたいのかな?」
「えっと、もうちょっと大きかったとおもいます。10センチじゃはずかしい」
「これはじつにとても良い高さじゃよ」青虫はまっすぐせをのばして言いました(ちょうど10センチだったのです)。
青虫はキノコからおりて、あるきながら言いました。「かたほうのはしを食べると高くなる、かたほうのはしを食べると低くなる」
アリスはキノコを見ながらよくかんがえました。どっちがどっちのはしでしょう。キノコはまんまるでしたから、それはとてもむずかしいのです。アリスはりょう手をのばしてそれぞれの先をちぎりました。
「どっちがどっちかな?」アリスが右手のキノコをちょっとかじったそのしゅんかん、アリスのあごはふくれ上がり、なんと足にとどいてしまいました!あごが足につっかえるのでほとんど口もひらきません。それでもなんとかがんばって、アリスは左手のキノコをちょっぴりかじりました。
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「これでやっとあたまがうごく」アリスはあんしんしましたが、すぐにたいへんなことがわかりました。アリスがちょっとみおろすと、そこには下に広がる青い森と、そこからにょっきりはえる長い長いアリスの首が見えたのです。
もうりょう手はぜんぜんあたまにとどかないので、アリスはあたまを下げてみることにしました。するとアリスの首は、すきなようにまがりました。しかしきゅうにかなきり声がきこえ、アリスは首をすくめました。大きなハトがアリスのかおに止まったのです。
「このあくま!」ハトはさけびました。
「わたしはあくまじゃないよ!そっとしといてよ!」アリスはおこって言いました。
「ふん、じゃ、あっちいけ」ハトはいやみったらしく言ってすにもどりました。
アリスはできるだけ木のあいだにかがみました。まだりょう手にキノコをもっていたことをおもい出し、きをつけながらふつうの高さになるまでかたほうかじり、そしてまたかたほうかじりました。いままで長いあいだへんな高さだったので、ふつうの高さがなんだかへんでしたが、それもすぐになれれました。
おくさまとコックと赤ちゃん
アリスがひろばにやってくると、そこには 1 メートルくらいの高さの小さないえがありました。「だれがみてもこの大きさじゃむりね、きっと中の人がこわがるわ。」そこでアリスは右手のキノコをちょっとかじり、20センチの大きさになりました。
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とつぜん、けらいが森からやってきて(かおだけ見たら、アリスは魚だとおもったでしょう)、どんどんドアをたたきます。すると中から丸いかおのカエルの目をしたべつのけらいがあらわれました。
魚のけらいはてがみをとりだし、まじめくさって言いました。「おくさまにでんごんせよ。女王さまがクロッケーにごしょうたいして下さるとのこと。」二人がおたがい低くおじぎをしたので、二人のまきげはからまってしまいました。
魚のけらいがかえってから、アリスはおそるおそるドアをノックしました。ドアがひらいたしゅんかん、大きなおさらがとんできて、木にあたってわれました。
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ドアはだいどころのすぐよこで、そこはもくもくけむりだらけです。
おくさまはいすにすわり赤ちゃんをあやし、コックはかまどでスープでいっぱいの大なべをまぜていました。
「ちょっとコショウいれすぎよ!」アリスは言いました。
あたりはたしかにコショウまみれ。おくさままでもがくしゃみをして、赤ちゃんなんか、ひっきりなしにくしゃみしたりないたりです。
だいどころでくしゃみをしていないのはコックとネコだけです。ネコはかまどのよこでニヤニヤとわらいながらすわっていました。
「あの、どうしてあのネコはこんなふうにわらっているの?」アリスはおそるおそるたずねました。
「こいつはチュシャネコなのさ!」おくさまはこたえました。「このブタめ!」
さいごのことばがらんぼうだったので、アリスはとび上がりました、でもそれは赤ちゃんに言ったのでした。
コックはスープの大なべを火から下ろすと、すぐに手のとどくありとあらゆるものぜんぶ、おくさまと赤ちゃんになげつけました。
「ねえ、ちょっとやめなさーい!」アリスはさけびました。
「ほれあんた、赤ちゃんのめんどうみたいかい!」とおくさまはアリスの方に赤ちゃんをなげつけました。「あたしゃこれから女王さまのところでクロッケーのしたくがあるのよ」と言っていそいでへやを出ていきました。コックはフライパンをおくさまになげつけましたが、あたりませんでした。
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赤ちゃんのようがおかしいので、アリスはにはちょっとたいへんでした。かわいそうな赤ちゃんはじょうきエンジンのようにくしゃみが止まらないのです、そこでアリスは外のくうきをすいにいきました。
赤ちゃんがブーブー言うのでアリスはしんぱいそうにのぞきました。はなはブタのようにとびだして、目は赤ちゃんにしては小さすぎです。赤ちゃんはまたなきだしました(ブーブーもいいますが、なくのとブーブーをいっしょにできないようです)。まちがいありません。それはブタです。じめんに下ろすと、ブタはちょこちょことしずかに森にはしっていったので、アリスほっとしたのでした。
「あのブタはとてもぶさいくなにんげんになってしまうところだったわ」アリスがつぶやいたそのときです。木のえだにチュシャネコがすわっているのを見てアリスはぞっとしました。
ネコはアリスを見て、ただニヤニヤするだけです。
「ねえチュシャちゃん、あの、わたしどこへ行けばいいかおしえてくれない?」とアリスはおそるおそるたずねました。
「そりゃあんたがなにをしたいかによるニャ。あっちにはぼうしやさんがすんでるし、そっちに行けば三月ウサギにあえる。あんたは女王とクロッケーをしにいくのかニャ?」
「それはすごくやってみたいけど」アリスは言いました。「わたし、しょうたいされてないの」
「またあとであうニャ。」そう言うとネコはゆっくりときえて行きました。さいしょはしっぽから、そしてだんだんニヤニヤとした口もとへ、ぜんぶきえてしまったあとでも、そのニヤニヤだけはしばらくのこっていました。
「わあ、ニヤニヤしないネコならよく見かけるけど、ニヤニヤだけあってネコがないのははじめて!」
おちゃかい
アリスはそんなにとおくまで歩かないうちに三月ウサギのいえが見えてきました。いえのまえの木の下のテーブルで、三月ウサギとぼうしやさんがおちゃをのんでいます。ヤマネがいっぴき二人のあいだでおひるねをしていました。
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「もうまんせきだよ!」アリスを見てふたりはさけびました。
「まだいっぱいあるじゃない」アリスははらを立て、テーブルのはしのおおきなひじかけいすにすわりました。
ぼうしやさんがちんもくをやぶり、「きょうなん日だったっけ?」とたずねると、ポケットからとけいをとりだしておちつきなく見てから耳にあてました。
アリスはちょっとかんがえて言いました、「四日です。」
「二日もくるってる!」ぼうしやさんはためいきをつきまいた。
アリスはぼうしやさんのかたからとけいをのぞきこむと、「なんてへんなとけい!」と言いました。「なん日かはわかるのに、なんじかはかいてない!」
ぼうしやさんは言いました。「いま一じはん。ばんごはんのじかんだよ」
「そうだったらいいのにね。」三月ウサギはつぶやきました。
「ぼくらはきょねんの三月のことをはなしてるんだ」ぼうしやさんは三月ウサギにティースプーンをつきだしてこたえました。あのハート女王さまのすてきなコンサートのとき、ぼくはうたうはずだった。」
きらきらひかる こうもりちゃんは
おそらの上で とんでるおぼん
「いちばんさえおわらなかったんだ。女王さまに『しぬほどつまらないざます、ひっこむざます!』と言われちゃった!」ぼうしやさんは言いました。
「なんてざんこく!」とアリスはさけびました。
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「わだいをかえよう」三月うさぎはさえぎりました。
「じゃあ、ちょっときいて、たいしたことないんだけど...」アリスが言いかけるとぼうしやさんはいいました。「じゃ、しゃべるな。」
このちょっとしたえんりょなさにアリスはがまんできず、おこってあるきだしました。それでもほかのみんなはおかまいなしです。さいごにアリスがみたのはふたりがヤマネをティーポットにつっこもうとしているすがたでした。
「もうあそこには行かない!」木をくぐりぬけて言いました。「わたしのじんせいで、いちばんさいあくなおちゃかいだよ!」
アリスが言ったとき、木のひとつにドアがあるのにきがつきました。「わあ、おもしろそう」アリスはおもいました。「でもきょうはなにもかもおもしろいな」なかはうつくしいにわでした。そこにはあざやかな花ぞのとつめたいいずみがありました。
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大きなバラの木が、にわのいりぐちに立っていました。花の色は白でしたが、三人のにわしがいそがしそうに花を赤くぬっていました。
アリスはきになってちかずきました。にわしのひとりがさけびました。「おい、5のカード!ペンキがこっちにはねてるぞ!」
「すみません、どうしてバラをぬっているのですか?」アリスがたずねました。
2のカードはひくいこえでこたえます「どうしてっておじょうさん。このバラは赤のはずがまちがって白いのうえちゃったんだ。女王さまにばれるとわしらくびになっちゃうのよ。」
そのとき5のカードがさけびました。「女王さま、女王さまがやってきた!」そして三人のにわしはじめんにひれふしました。
まずやってきたのは10人のへいしです。みんな三人のにわしとおなじすがたです。それから10にんのけらいがやってきて、そのつぎがこどもたちです。かわいらしいこどもたちは手をつないでたのしそう。そのあとおきゃくさんたちの中に、アリスは白ウサギをみつけました。ハートのジャックがつづいたあとで、さいごにハートの王さまと女王さまがやってきました。
ぎょうれつがアリスとむきあうと、女王さまはたずねました。「そのこども、そちはだれざます、なまえはなんざます」
「わたしはアリスです。女王へいか」アリスはていねいにこたえましたが、「どうしてみんなトランプなの?ぜんぜんこわくないわ!」と言いました。
「ではあそこにいるのはだれざます」と女王さまはバラの木のしたでひれふしている三人のにわしをゆびさしました。
「しってるわけないじゃない」とすごいゆうきで言いました。
女王さまはかおをまっかにそめてさけびました。「この子のあたまをちょんぎっておしまい!」
「ばかじゃない!」アリスが言うと、女王さまはだまってしまいました。
王さまはは女王さまのてをとり、「まあまあ、この子はまだこどもじゃないか」と言いました。
「まあいいわ!クロッケーはできるざます?」女王は言いました。
「はい!」とアリスはさけびました。
クロッケーたいかい
「みなのもの!ここざます!」女王さまはさけびます。みんなはありとあらゆるほうこうにはしりだし、おたがいつまずきあってしまいます。それでもほんのちょっとでいちにつき、いよいよゲームがはじまりました。
アリスはこんなにきみょうなクロッケーは見たことありませんでした。クロッケーのボールは生きたハリネズミ、木づちのかわりは生きたフラミンゴです。へいしたちはふたりひとくみでてあしをつかみ、アーチのかたちをつくります。
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アリスはだんだんつまらなくなって、やめたくなりました。こっそりぬけだそうとおもっているとそらにきみょうなものがあらわれます。それはニヤニヤした口でした。「あれはチュシャネコだ、やっとおしゃべりができる。」
「うまくやってるかニャ」ちょうどしゃべれる口がみえたところでネコは言いました。
つづいてあたまぜんたいがでてきたので、アリスはしあいのことをはなしはじめました。おしゃべりあいてができてとてもうれしかったのです。
「ぜんぜんうまくいってないよ。みんなけんかっぽくてだれもひとのはなしなんかきかないもの」
ネコのあたまはうすれてゆき、そしてかんぜんにきえました。
「さあ、ゲームをつづけるざます」女王さまが言ったので、アリスはゆっくりと女王さまについて行きました。
ゲームのあいだじゅう、女王さまはけんかをやめさせようとせずに「あのおとこはしけいざます!あのおんなもしけいざます!」とさけぶばかりでした。せんこくをうけたひとたちは、へいしにつかまってしまいました。いちじかんはんで、しけいじゃないのは王さまと女王さまとアリスだけになりました。
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それから女王さまはいきをきらせてアリスにききました。「そなた、にせウミガメにあったことはあるざますか?」「いいえ、にせウミガメってことばさえしりません。」とアリスはこたえました。
「にせウミガメはにせウミガメスープのもとざます。さあおいで、にせウミガメがはなしてくれるざます。」
ふたりがいっしょにあるいているときに、王さまがこごえでみんなに言うのがきこえました。「みなのもの、むざいである。」
「なーんだ、よかった!」アリスはつぶやきました。
ふたりはすぐにたいようの中でおひるね中のグリフォンのところにいきました。
「ほれこのなまけもの。このおじょうちゃんを、にせウミガメにあわせるざます。わらわはいったんもどって、めいれいどおりみんなしけいになったかどうか、みてくるざます。」
グリフォンはおきあがり目をこすりました。「またいつものたわごとだよ。だれがしけいになるかっつーの。ケ!」
そんなにとおくいかないうちに、にせウミガメはすわっていました。それはいわの上で、かなしく、こどくにみえました。アリスはふかくどうじょうしました。
「このおじょうさんがおまえのはなしをききたいんだってさ」グリフォンが言いました。
「はなしてやろう」にせウミガメはふかくうつろなこえで言いました。「わしはかつてほんとうのウミガメで、こどものころはうみのがっこうにかよったんじゃ。」
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「わたしもがっこうにいったよ。わたしはフランスごとおんがくをならったの。いちにちなんじかんあったの?」アリスは言いました。
「さいしょの日が10じかんで、つぎが9じかんと、こうつづくのじゃ」
「レッスン(へってゆくこと)だけにレッスンっていうんだって。」グリフォンはいいました。
にせウミガメはふかくためいきをつきました。アリスにむかってはなしかけようとしましたが、なきはじめてこえがつまりました。
「おぬしはうみのなかですんだことがないかもしれない。」(あるわけないじゃない、とアリスはおもいました。)「だからロブスターおんどについてなにもしらんじゃろう。」
「さっぱりしらないわ。でもそれってなんなの?」
「ちょっとだけみたいかい?」
「もちろん!」
かれらはまじめにアリスのまわりでおどりはじめました。アリスにちかずくたびにアリスのつまさきをふんずけて、まえあしをふりました。
にせウミガメはふかくなげき、すすりなきながらうたいはじめました。そのときです。「さいばんがはじまるよ!」ととおくできこえました。
「いこう!」といってグリフォンはアリスのてをとりはしりました。
「いったいなんのさいばん?」アリスがいきをきらせても、グフィフォンははやくはしるだけでした。
トランプたち
おおぜいのひとびとにかこまれて、ハートの王さまと女王さまはいすにすわっていました。ジャックはふたりのまえにくさりでつながれていました。白ウサギは王さまのそばでトランペットとまきものをもっています。さいばんしょのまんなかにはタルトののったおおきなおさらがおいてありました。アリスはそれをみてとてもおなかがすきました。「はやくおわらないかな、そしたらあれをたべられるのに!」とアリスはおもいました。
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「つみをよみあげなさい」と王さまが言いました。
白ウサギはトランペットをふき、まきものをひろげてよみました。
「ハートの女王さま、タルトをつくった、あるなつのひに、いちにちかけて。
ハートのジャック、タルトをぬすんだ、それからぜんぶ、もってっちゃった!」
「はんけつをくだすのじゃ」王さまはさいばんかんにいいました。
「ちょっとおまちください、まだまだやることがあります!」白ウサギはいそいでさえぎりました。
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「さいしょのもくげきしゃをよべ」王さまは言いました。さいしょのもくげきしゃは、ぼうしやさんです。「ぼうしを取りなさい。」王さまは言いました。
「これはわたしのではありません」ぼうしやさんが言いました。
「ぬすんだのか!おそれずにしょうこをだせ、さもないとそっこくきりすてじゃ」王さまが言いました。
そのときです、アリスはなんだかとてもムズムズしはじめました。またどんどん大きくなってきたようです。
かわいそうなぼうしやさんは、かたひざをつきました。「おゆるしを、わたしのようなつまらないにんげんには、だいそれたことです。かっか」
「たしかにつまらんはなしじゃ、もしそれだけなら、いってよろしい」と王さまは言いました。
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「ぼうしやさんの首をそとではねるざます」と女王さまはつけくわえましたが、おまわりさんがおいつくまえにぼうしやさんはいなくなりました。
「つぎのもくげきしゃをよべ!」と王さまは言いました。
アリスはわくわくして白ウサギを見ていました。白ウサギがぞっとする声でよんだとき、どれだけびっくりしたことでしょう。「アリス!」
「はい!」アリスはじぶんがどれだけ大きいのかもわすれて、さけんでしまいました。そしていそいでとびだしたので、おどろくさいばんかんたちのせきをひっくりかえしてしまいました。
「あれ?す、すみません!」アリスはさけんで、さいばんかんたちをつまんでもどそうとしました。
王さまはさけびました「せいしゅくに!だい42じょう、しんちょう1キロいじょうあるものは、さいばんしょにはいれない。」みんながアリスをみました。
「そんなに高くないもん」アリスは言いました。
「高いぞ」王さまは言いました。
「ほとんど2キロはあるざます」女王さまはいいました。
「さあ、これでしょうこはそろった!さいばんかん、はんけつをくだせ」王さまはテーブルのタルトをゆびさして、かちほこって言いました。
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「おまちなさい、しけいがさきざます、はんけつはあとざます」女王さまが言いました。
「そんなのむちゃくちゃよ!」アリスは大ごえでさけびました。
「だまらっしゃい!」女王さまはかおをむらさきにしていいました。
「だまるもんですか!」アリスがいいました。
「あなたなんかへでもないわ、ただのトランプじゃないの!」アリスはこのとき、いつもののおおきさまで大きくなっていました。
そのときトランプたちはそらへまいあがり、アリスのほうへとんできました。アリスはちいさくさけび、トランプたちをやっつけようとしました。
ふときがつくと、アリスはおねえさんのうざのうえでねていました。おねえさんはやさしくアリスのあまたをなでていました。
「アリスちゃん、もうおきて!ずいぶんよくねたわね!」おねえさんはいいました。
「あれ、なんてへんなゆめだったんだろう」アリスはおねえさんに、このへんなぼうけんについてぜんぶおしゃべりしました。アリスがはなしおえると、おねえさんはアリスにキスをして、「なんておもしろいゆめだったのかしら、でもね、もうおそくなるわよ」と言いました。アリスはおきあがっておうちへかえりました。なんてすばらしいゆめだったのかしら。
さんこう
Alice's Adventures in Wonderland: A Pop-up Adaptation of Lewis Carroll's Original Tale by Robert Sabuda isbn:0689847432