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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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英国王ジョージ三世が残した魅惑の科学実験室

ずいぶん間が空いてしまいましたが id:haruko41 さんに触発されてイギリス旅行ネタを書きます。ロンドン科学博物館で一番感動したのが、ジョージ三世の科学実験コレクションです。時は18世紀、まだ王子だったジョージ三世は頃家庭教師の影響を受け自然哲学(科学の当時の呼び名)に興味を持ち始めます。彼は 1761 から発明家のジョージ・アダムスに科学実験のための様々な器具を作らせて、ロイヤル・ファミリーの娯楽と教育に活用しました。当時、公開科学実験は時代の最先端を行く娯楽でした。貴族や市民はこぞって実験に参加し科学の驚異を楽しんだのです。幾つか写真を撮ったのでご紹介します。

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科学は一種のファッションでもありました。この携帯式地球儀はケースの裏が天球儀にもなっています。当時の英国紳士はこういう物をポケットに忍ばせていました。

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これはカメラの原理を糸で示した物です。

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様々な重りと滑車を使って力学の実験をします。

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日本で言う処のエレキテルですね。

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これは何だったか忘れました。

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ベクトルを使って力の方向を変える実験です。

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物が転がる軌跡を糸で示した物?

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アルキメデスのポンプ

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色々な金属が磁石にくっつくかどうかを実験します。ハートの形をしている所が意味深で可愛らしいですね。

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蒸気機関の原理を示したものです。

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右の球が月で、左の球で潮の満ち干きの原理を説明しています。

光の加減が悪くちゃんと写真を撮れなくてほんの少ししかご紹介出来ませんでしたが、ロンドンに行くとこんな美しい実験器具を大量に見ることが出来ます。科学という抽象的な物を表現するためにここまで繊細で趣味の良い造形を創りだした当時の発明家達を私は本当に尊敬しています。

皮肉にも、ジョージ三世が精力的にコレクションを始めた頃から公開実験は下火になり始め、19世紀には大衆の興味を引かなくなりました。原因としては、科学が発達しすぎて専門化したために公開実験がエンターテイメントとしての魅力を失った事と、シェリー夫人の「フランケンシュタイン」に代表されるように科学そのものへの怖れが広がったためと言われています。