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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

ミニマル音楽機械

自動演奏機械の作業記録。

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ふと久しぶりに音の出る作品を作る事にしたんだけど、そこに一つ条件を付けました。全ての部品を糸で縫い合わせて、「ネジや釘、ボンドなど他の方法を使わない事」です。他に釘を使わないで組み立てる方法としては、昔から伝わる組子とか木組というパズルみたいな方法もありますが、ちょっと違って紐を主体とした設計にしてみました。紐は動く部品がある機械と相性が良く、昔の帆船や複葉機によく使われています。引っ張る力だけで押す力が全く無い所が面白いので、いっその事全ての部品に使う事にしました。色々分からない事が沢山あったので結局四つほど試作品を作りました。

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まず色々な太さの糸と穴の間隔を試してみて、太めの木綿糸と 10 から 8 ミリ程度の穴間隔を使う事にしました。合成糸の方が強いですが、この太さだと滑りやすく伸びやすいので木綿にしました。

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次にフレームの設計。簡単なのは写真のように一枚板をくりぬいて鐘を入れる方法です。鉄パイプの鐘は端から 22.4% の位置に穴を空け、ナナメに糸で引っ張る形になります。この方法は音が鳴った時の振動を弱めずに鐘の位置を固定する理想的な設計です。この時は銅に糸を巻いたハンマーを設計しましたが、音が弱すぎたので後の試作では木をそのまま使う事にしました。また、このようにフレームがハンマーの軸と平行だとハンマーと鐘の距離調整が難しいため、今回はこの方式を諦めました。

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次に試したのがハンマーの軸に垂直にフレームを作る方法です。この形があまりにも良く音が鳴るので、あまり形を変えないでそのままカムを取り付ける事にしました。

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カムの設計は必要な強度がわからないのでおっかなびっくりです。最初軸を丸木で作る事も考えていましたが、工作が面倒なのと縫い合わせる方法を思い付かなかったので単純に軸も板で作る事にしました。意外と問題無く動作しました。このカムを使って鐘二つの試作品を作りました。

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開発中に、縫い目独自の特性が色々明らかになりました。縫い目は引っ張る力しか無いので、L 字形に部品を付けると必ず縦か横に弱い方向が生まれます。この弱い方向をうまく制御する事が設計の重要な点です。写真は左が試作品で右が完成品です。左の試作品の方はハンドルを回す時にフレームとカムが引っかかってスムーズに動きません。これはフレームの設計が縫い目による接続部の特性を生かしていないからです。図のように、左の試作品ではフレームの柱が左右にブレやすくカムに干渉してしまうのです。右の完成品ではここを改良してスムーズにハンドルが回るようになりました。

語り出すときりがないですが、こうして完成しました。

a Minimal Music Machine 4 bells