今回はわりと重要な情報を書きます。参考にした本は Bart Hopkin の Musical Instrument Design ISBN:9781884365089 です。これは滅茶苦茶すごい本です。自作楽器に興味がある人は絶対買った方がいい。これは実際に楽器を作る話では無くて、音のなる仕組みや理論についてやさしく書いた本です。20 年前に出会ってたら人生変わったかもと思いました。
さて、色々作る前にまず、「手作り楽器でワオ!」のサイトに、木琴には発砲ウレタンが良いと書かれてあったので http://kanehiro3.at.webry.info/201010/article_4.html それらしい物を探しました。うちの近所に発砲ウレタン屋さんという物は無いので、だいたい近い物としてベッドの中に入れるクッションが使えると分かりました。
音の響きが随分良くなる事が分かります。これを利用するとチューニングの作業が随分楽になります。
チューニングには iPad アプリを使いました。これもびっくり。昔何万円もしたチューナーと同じ機能が iPad を使うと数百円で実現出来るのです!まずこの PitchSpectrum というアプリでだいたいの周波数分布を見ます。周波数分布を見ると分かるのですが、物を叩いた時にきれいな一つの音だけが出る事はありません。一番良く聞こえる主音の他に、様々な派生音が生まれます。派生音は音の出かたによって決まっていて、例えば長方形の形を叩いた時は
- 主音
- 主音 x 2.756 Hz (だいたい一オクターブ上の高めシャープ四度)
- 主音 x 5.404 Hz (だいたい二オクターブ上のシャープ四度)
- さらに聞こえなくなるまで高い音
が出るそうです。実際の楽器では、共鳴を使ったり特定の場所を削って派生音を目立たなくする事があります。
次に、iChromatic Strobe Tuner HD を使って正確にチューニングします。チューニングの仕方は、単にノコギリやヤスリで短くするだけです。ここで闇雲にやると体力を消耗するので、一つの棒のチューニングが完了すると残りの棒の長さは計算で求める事が出来ます。基本的に、長さが半分になると周波数が四倍になる(二オクターブ上がる)という性質から求めます。つまり、数式で書くと、k がとある定数の時、
- (k x 棒の長さ)2 = 波長
なので、
- 棒の長さ = √波長 / k
という事になります。k の求め方は逆に
- k = √波長 / 棒の長さ
です。例えば仮に A の音(波長 390 mm) の棒の長さが 294 mm だとすると、k は √390 / 294 = 0.06717 です。そこから一つ上の C の音(波長328 mm) の棒を求めるには、√328 / 0.0671 = 270 mm という事になります。ところが、ここに大きな落とし穴があるのです!
実は、木材は自然の物なので、材質にかなりバラツキがあるのです。同じ長さに切っても、材質が違うと簡単に三度四度変わってしまいます。幸いにも一本の木材はだいたい同じみたいなので、買う時に気をつければ良いです。だいたい重い木ほど低い音が出ます。とは言ってもなかなかホームセンターで同じ重さの木を買うのは難しい。握った所で重さなんか分からないです。そこでどうするかというと、答えは簡単。床に打ち付けて音を聞けば良いのです。高い音がしたら同じ長さでも高い音の木琴が出来るという理屈です。
このチューニングの作業というのは、チューナーさえあれば慣れると割と簡単に終わります。昔初めてチューニングしたときはシンセの音の耳コピで作業したので大層大変でした。
あとは切った木を固定するだけです。固定の仕方には色々工夫のしがいがありますが、一点大切なのは、端から 22.4 % の位置で固定する事です。今回は前述の Musical Instrument Design にあったアイデアを借りて、クーラーの隙間を埋める時などに使うフカフカのテープをこの位置に貼って床に置く事にします。
加えてベルクロ(マジックテープ)のイガイガの面も貼ります。こうすると絨毯に引っかかってがちっと固定されますし、壁面に取り付ける事も可能になります。ベルクロも本に紹介されていましたが、フカフカテープとのダブル使用は独自の工夫です。
じゃーん。という事で、色んな形にレイアウトして色んな音階を楽しむ事が出来ます。
木琴の作り方まとめ。
- 長方形の形からは主音の他、2.756 倍、5.404 倍の音が出る。
- 棒の長さ半分にすると、音は二オクターブ高くなる。
- 棒の長さ = √波長 / k
- k = √波長 / 棒の長さ
- 棒は 22.4% の所で留める。
参考
- バラバラ木琴: http://kanehiro3.at.webry.info/201010/article_4.html
- Musical instrument design (google books): http://books.google.com/books?id=CuHi9edzELEC