言語ゲーム

とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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インディアンのかご文化

http://theautry.org/exhibitions/the-art-of-native-american-basketry

今日はメンテをしに車屋へ行ったついでに、Autry というネイティブ・アメリカ専門の美術館に行った。昼ご飯を食べるついでに期待せず立ち寄っただけなのだが、特別展のかご特集がとても面白かった。

アメリカは広大な大陸だが、その風土に応じて様々なかごの種類がある。西海岸のかごは草を編んで作った素朴な物だが、北の海ではクジラのヒゲを編み込んだ金属的で繊細な物が作られる。東海岸では木を割って荒めのきしめんのようなかごを作る。また、竹から作られるかごもある。どのかごもその土地に応じて最適な素材と工法が選ばれる。

ビデオの中で、かご作りの母娘が材料になる物を探して草むらに入って行く。わたし達のかごは、この土地から素材を取り出し、この土地のために作られる。そう語られるかごは、なんて自己完結的で美しい物だろう!私は最適化がとにかく大好きなので、歴史と風土によって最適化されてこういう形が出来上がったというストーリーに大変魅了された。

かごの用途も様々だ。かごは料理にも使われる。あんな燃えやすいかごを料理に使うって理解できますか? 説明によると、かごに潰したドングリを敷き詰め、その上に焼いた石を載せて蒸すのだそうだ。赤ちゃんの背負子もかごで作る。このデザインは現在のアメリカの背負子にも継承されているそうだ。子供のおもちゃに使う背負子という物もあって、手のひらサイズのかわいらしい物で、多分人形を載せてお母さんの真似をして遊ぶのだろう。そしてなんとボトルにもなる。ロウみたいな物で目を埋めると、水を入れても漏れないそうだ。

こういう物を見ると、つくづく創造性に制約は欠かせない物だと思う。環境と用途という二つの制約をかいくぐって、それでもデザイン的な工夫をしてしまうのは何故なのだろう。模様に込められたガラガラヘビや弓矢のそれぞれには物語が込められ、素材には土地で育まれた自然史と技術史が刻まれて、よそ者の私にも伝わる何かを訴えかけているようだ。