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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

Twitter: @propella

Maker Faire Tokyo 2019 計画

この夏 8月3,4日に東京ビッグサイトで開催される Maker Faire Tokyo 2019 https://makezine.jp/event/mft2019/ に出展する事になりましたので、いま計画を立てています。基本路線は京都での発表と同じですが、前回の経験を生かして、よりパワーアップした作品をお見せしたいと思っています。ただ、会期が土日とも京都より一時間長いので、そんなに体力が持つかどうか心配です。。。

基本計画: 論理機械楽しいよ!

京都の展示で色々な質問を受けました。「なぜこれを作ったのですか?」「これはどういう仕組ですか?」お恥ずかしい話ですが、これらの質問にろくに答える事が出来ませんでした。というのも、平日はサラリーマン土日は子育てと自分の時間が取れず、やっとモノを完成させるのに精一杯だったのです。

しかも最初期の作品から数えると二十年くらい経つため、正直なんで作り始めたかどうでも良いというか、もう半分忘れてしまっています。仕組みについても最近まで子供に邪魔されてノートすらつける事が出来なかったので、目をつむって脳内だけで設計する癖がつきます。そうなると途中経過を忘れてしまい何故動いているか自分でも分からなくなってしまいました。

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計算ガイコツ 1998 最初期の計算機械

しかし京都の展示で、ストーリーというか、説明の大切さが身に沁みました。作品を作るときはかなり細かいどうでも良い所まで作り込んでしまうのですが、Maker Faire のような大人数を相手にする対面形式だと折角の技もまず細かすぎてお客さんに伝りません。むしろ他の方の展示を参考にすると、単純なメッセージがど〜んと直球で来るのが一番のようです。

私の場合、単純なメッセージとは「論理機械楽しいよ!」です。

論理機械、それは人間の知性を再現しようとした人類の無謀な企てです。古くは 13 世紀のルルスの円盤から John Venn の画期的なベン図Lewis Carroll のユニークな論理ゲーム、William Jevons の論理ピアノ、そして電子計算機の発明まで、人類は自分達の手で知性を形あるものとして作り出そうとしてきました。その究極の形態である人工知能は微細で複雑な電子回路の電子の流れとして作られていますが、知性の本質は、誰でも直感的に理解出来る美しい物であるはずだという信念を私は持っています。

これだけややこしい物を作っていてまだまだ説得力無いですが、誰でも手にとって動きを把握出来るシンプルなからくりで、知性の本質を直感的に理解出来るはずだと言うのが私の主張です。仏像やマントラが仏教世界の象徴であるように、論理機械は知性の象徴なのです。

対象として加算器を選んでいる理由は、加算器が「足し算」という身近な計算を表しているという事と、加算器の本質が XOR という丁度良い具合に複雑な論理演算である事です。これがただの AND や OR だと面白みがありませんが、XOR というのは最近流行りのニューラルネットの最初のサンプルに使われるほど丁度良いのです。

全加算器を作って分かったのですが、全加算器に使われる 3 ビット XOR は、AND と OR を使って表現出来る 3 ビット演算のうち最も複雑な物です。カルノー図を描くと市松模様になるので最適化のしようがありません。とか、こういう話を続けるとキリがないですが、シンプルにバ〜ンと分かるようにしたいなーと思っています。

木製全加算器 2019 新バージョン

京都で発表した全加算器に、いくつか改良を加えます。

  • 三桁の入力を横一列に並べる。
    • 京都のやつは入力が奥行き方向一列に並んでいたので、正面から見てすべての入力を一覧出来ないという問題がありました。それを横一列に並べることによって、各入力の状態を見やすくします。
  • 出力を左右対称に並べる。
    • 京都のやつは Carry が左端で Sum が中央になっていました。この位置はある程度自由に置けるので、デザイン的には左右対称な方がよろしいです。

木製半加算器 2019 新バージョン

現在のやつは説明が難しいので、もうちょっと素直に作ったやつ。

ペーパークラフト版半加算器

持ち帰って自分で遊べるやつ。Maker Faire で見た風で動くインスタントロボ かっこよかったです。ああいうの作りたい。

説明用冊子

これは無理かな。チラシでも良いので説明用の何かを作りたい。

Maker Faire Kyoto 2019 「からくり計算器」記録

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「からくり計算器」展示作品

先月のゴールデンウィークに、けいはんなで開かれた Maker Faire Kyoto 2019 に出展しました(https://makezine.jp/event/makers-mfk2019/m0093/)。その記録と感想です。

木製全加算器 2019

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木製全加算器 2019

まず今回のメイン作品がこの『木製全加算器 2019』です。1 + 1 + 1 = 3 までの計算が出来る加算器です。加算器の作品を初めて作ったのは 2009 年 (https://propella.hatenablog.com/entry/20081124/p1) の事ですが、当時から自然の発想として、次のステップは全加算器だと思っていました。それから怖ろしいことに全加算器の完成まで十年を費やしてしまいました!!!なぜこんなに時間がかかってしまったかと言いますと、全加算器を実現するだけの加工精度と低摩擦を得る方法を思い浮かばなかったのと、なかなか集中出来る時間がとれなかったからです。それでも諦めずにいればなんとかなるもんですね。

ド・モルガンの円盤 2019

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ド・モルガンの円盤 2019

木製全加算器の前に Fusion 360 の練習として作りました。これまでは Illustrator だけで設計を行っていたのですが、やっぱり平面だけだと部品の干渉に気が付かなかったり、ボリュームの確認が出来なかったりして手戻りが多かったので、頑張ってこの 3D CAD を練習しました。3D で確認出来るので重宝してますが、構造が複雑になるとすぐに重くなるのが難点です。

この作品は基本的な論理演算である AND と OR を簡単な機構で実現したものです。他のすべての回転型論理器械で同じ仕組みを使っています。ド・モルガンの法則を物理的に示す事が出来ます。

木製半加算器 2017

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木製半加算器 2017

小型の半加算器です。アートスペース虹の最後のグループ展で展示した物です。基本的な仕組みは半加算器 2016 と同様ですが、二つの軸を同じ方向に回転させる平行クランクの採用により小型化を実現しました。

木製半加算器 2016

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木製半加算器 2016

初めて作成した回転型の論理器械です。回転の動きを使うことによって摩擦が減り、将来の全加算器の実現が可能になりました。また、部品がバラバラにならず、作者が展覧会場に常駐しなくても壊れないメンテナンスフリーな点も画期的でした。

ブールそろばん 2010

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ブールそろばん 2010

スライド式論理器械の機構を説明するために作成した物です(https://propella.hatenablog.com/entry/20100509/p2)。スライド式は回転式よりも扱いが難しいですが、動きがより直感的なので説明には向いています。

木製半加算器 2009

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木製半加算器 2009

初めて展覧会で発表した木製加算器です(https://propella.hatenablog.com/entry/20091202/p1)。この頃はスライド式の機構で、しかも部品はジグソーパズルのように台に置くだけなので、作者が不在だとすぐに壊されるという展示しづらい作品でした(この写真もうっかり部品の置き方を間違ってしまっています)。この展示の苦労から後の回転式の機構が生まれました。スライド式は高い工作精度が要求され、何かの拍子に動かなくなるのも難点です。今回も最初全然動かなかったのですが、なぜか会期後半にはラクラク動くようになりました。

チラシ

https://drive.google.com/file/d/1OQ04TiBMRlbmNoBKzczilhJcIdFEo5V5/view?usp=sharing

簡単ですが、今回の展示作品の仕組みについて簡単に解説した物です。

感想

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Maker Faire Kyoto 2019 展示風景

Maker Faire に出展するのは三度目でした。前の二回は電子工作でしたが、今回はなんの変哲も無い木工作品なので、果たして Maker Faire の客層的にウケるかどうかとても心配でした。蓋をあけると皆様大変好意的で、とても楽しい展示となりました。

特に意外だったのが子供にめちゃくちゃ受けた事です。作品内容がかなりマニアックなので、自分みたいなコンピュータエンジニアを想定客としていたのですが、どういうわけか沢山の小学生がガッツリと前に陣取ってあれこれ遊んでしました。小学生にブール演算について説明出来るほどの説明スキルが自分に無く適当にお茶を濁していたのですが、自分でも子供がどこに興味を惹かれているのかよく分かりませんでした。

幸いにも次回 8月3,4日に開催される Maker Faire Tokyo への出展が決まりましたので、その計画もまた書きます。

参考

はずかしい

今日はミニ遠足の日だった。お弁当を持たせて、体操服を着せて通園バスに乗せようとしたところ、長女が

「はずかしい!」

と言って乗ろうとしない。僕は耳を疑った。え、今なんて言ったの???

よく見ると、車内の年長組のお兄ちゃんお姉ちゃんは普通の制服を着ている。今日のミニ遠足は年中組だけなので、他の学年は体操服を着ていないのだ。それを長女は、間違って体操服を着てしまったと誤解してしまったらしい。ちなみに双子の次女は全く平然と乗っている。

長女は家ではおっちゃんみたいなキャラで、自由奔放でマイペースで唯我独尊なタイプだ。なので、「はずかしい」と言ったのを聞いてびっくりしてしまった。この天真爛漫な我が子もついに「はずかしい」を覚えたのかと複雑な気持ちになった。

四歳児との日常

最近の日常の記録を残す。

起床は 7:30 ごろ。家族全員だいたい同じ時刻に起きる。去年の今頃は双子の起床がめちゃくちゃ早くて、何とか目覚めを遅らせようと窓にアルミホイルを貼って日光を遮断したりしてみたが、今年は常識的な時刻に起きるので楽だ。最近ゴミの収集が早くなったので、僕はあさイチでゴミを捨てに行く。

天気が良いと双子はスッキリ目が覚めていきなりお絵かきと工作を始める。リビングの一角に低いテーブルを置き、そこは双子のお絵かきコーナーになっている。裏紙に絵を書いたり紙の箱にセロテープを貼ったりして遊ぶ。いつまでも止まらないのでトイレに行って顔を洗うよう促す。一方で曇っているとずーっと寝ている。機嫌の悪いときは Eテレを見せる。

たまーに前の晩すごく疲れて早く寝た朝におねしょをする事もある。前の旅行では念の為オムツを使っていた。まだたくさんオムツが余っているが、もう必要無いかも知れない。

長女は割と自分で顔を洗うようになった。幼稚園の先生が見分けやすいよう次女だけは髪を長くしているので、頭に布みたいなやつを被せて濡れないようにして顔を洗う。朝ごはんはあまり食べない。ご飯やパンは結構食べるが、おかずは全然。

妻が好きなのでテレビは「モーニングCROSS」というのをつける。双子はこの番組に興味を示さないが、8:00 過ぎて番組が料理や通信販売に変わるとテレビに釘付けになる。そのあたりで洗濯物を干したり、双子の着替えを手伝ったりする。双子はまだ一番上のボタンを止める事が出来ない。一番上のボタンは見ないで止める必要があるので難しい。

遅い日は僕はだいたいこの辺で家を出る。早い日は双子が起きる前に会社に出かけてしまう。

週末の朝はだらだらと家事をして、遊びに出るのは 11:00 くらい。だいたい目的地についたらすぐ昼ごはんになる。そろそろ暑いので出来たら早起きして出かけたいが、なかなか体が動かない。

週末は僕が双子を風呂に入れる。家にいる時間は常にお絵かきや遊びで忙しいので、風呂まで連れて行くのに苦労する。最近次女が「水いぼ」になって、風呂に入ると痒がったり痛がったりするのでめちゃくちゃ辛い。皮膚科に行っても特に治療法は無く。ただ何年も我慢するしか無いらしい。双子はまだ自分で体を洗えない。長女は自力で湯船の出入りが出来るようになって来た。

夕食の後の歯磨きがまた苦労する。ツイッターで見た、「ハミガキ粉を複数の中から選ばせる」という技を使ってだいぶスムーズに運ぶようになって来た。歯磨きは辛いが、昔と違って泣き叫ばないようになったので精神的には楽だ。平日はだいたいこのあたりで僕は帰宅する。

双子の就寝は 20:30 から 21:00 ごろとなる。添い寝をすると僕もつられてそのまま寝てしまう。寝る直前までお絵描きと工作は続くので、リビングは常に紙吹雪とセロテープでゴミ屋敷のようだ。これほどの創作意欲は羨ましい。

僕はというと先月の Maker Faire Kyoto で無理をしすぎてひどい風邪になってしまったので、この一ヶ月夜は何もせず寝ることにしている。調子の良いときには隣の駅まで 6 キロほどジョギングする。前は都立公園を好んでいたが、最近はとにかく何も考えたくないので、起伏のある公園では無く、なだらかな隣の駅までの自転車道をまっすぐ行って帰る。一応気をつけているつもりだが、体重は増える一方だ。

ド・モルガンの円盤

 

来る5月4日と5月5日にけいはんなMaker Faire Kyoto https://makezine.jp/event/mfk2019/ というイベントに出品する事にしました。一年以上作品制作のブランクが空いてしまっているので、リハビリとして簡単なやつを作りました。それがこの『ド・モルガンの円盤』。簡単なしくみで『ド・モルガンの法則』を表現する物です。

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1 AND 1 = 1, 0 OR 0 = 0

まず、1 AND 1 = 1 または 0 OR 0 = 0 を表す状態です。影で分かりづらいですが、AND の入力は円盤の上で、出力は左側。OR の入力は円盤の下で、出力は右側になります。

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1 AND 0 = 0, 0 OR 1 = 1

次に 1 AND 0 = 0 または 0 OR 1 = 1 を表す状態。

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0 AND 0 = 0, 1 OR 1 = 1

最後に 0 AND 0 = 0 または 1 OR 1 = 1 を表す状態です。

Maker Faire Kyoto 当日のために、現在同じ仕組みを使った全加算器を開発中です。図面上はだいたい出来てますが、ちゃんと動くかどうかまだ未知数です。今まで設計にはイラストレータを使ってましたが、今回に初めて Fusion 360 という CAD ソフトを使っています。物を組み上げる前に何となく立体イメージがつかめて便利ですが、なかなか慣れずに苦戦しています。

参考までに同様の過去作品はこちら:

propella.hatenablog.com

自転車

こないだ四歳の双子は生まれて初めて小金井公園のレンタル自転車に乗った。最初の二時間がなかなか興味深い学習体験だったので記録する。

選んだ自転車は 16 インチのコマ付き。小金井公園には幼児用に一週数十メートルの小さなコースがあるのでそこで練習出来る。

ふたりとも最初はペダルを回すという事すら出来ない。三輪車すら乗ったことが無く、足をグルグル回す動きをやった事が無いのでどのように力を入れれば回転になるのか要領が分からないらしい。こちらとしてもまさかペダルすら回せないとは思ってなかったので途方に暮れてしまった。

私の手を子供の足に添えて動かしてみるが、全く動かそうという気配が無い。また、ハンドル操作も出来ないのでペダルは諦めてハンドル操作をまず教える事にした。自分の手で自転車の後ろを押して前に進めつつ、コースから外れそうになるとハンドルを助けてやるのをしばらく続ける。ハンドル操作は比較的簡単で、コースを数周回るうちに何とかなって来た。

ただペダル操作はやはり難しい。コースは微妙に上り下りがあり、下りが続く区間では何となく足を回せるようになるが、上りだと全く諦めてしまって私だけが自転車を押している状態になってしまう。そのうち自転車を押すこちらの腰も痛くなってきて嫌になる。ふと、妻を見ると、自転車では無く子供の背中を押していた!なるほど、子供の背中を押せば屈む必要も無く腰が楽だ。これは新しい発見だ!!

さて、このあたりで最初の一時間くらい経過した。長女は少しずつペダルを漕ぐのが楽しくなって来たようだが、ペダルが死点の位置、すなわち足が軸の上下にある位置で自転車が止まってしまうと重くて自分では動かせない。そういう場合は足をちょっと戻して横にすると力をかけやすいよーと教えてやってもなかなか上手く行かない。最初は根気よく毎回止まるたびにちょっとペダルをずらすのを指導していたが、そのうち私も面倒臭くなって止まると何も教えず押すだけという風になってしまった。

ところが、最初の一時間半くらいで長女は自然と死点を回避してペダルを押すようになった。そして二時間くらいになると全く止まらずにコースを回れるようになり、だんだんと私が歩いて追いかけるのも大変になって来た。この間特に何を教えるという風でもなく、単に止まったら背中に手を添えてペダルの回し始めを補助してやるというのを延々繰り返しただけだが、自然と力の入れ具合を身に付けたようだ。

というわけで、人間は二時間もあれば全くペダルを回せない状態から歩くより速くコマ付き自転車を漕げるようになるという事が分かった。たった二時間で目に見えてスキルアップ出来る能力はあまりないので面白かった。

ちなみに、四歳で初めて自転車に乗るというのはかなり遅いようだ。かなり以前からストライダーが欲しいと思っていたが、幼い双子を同時にストライダーに乗せて監視出来る自信が無く躊躇していた。ようやく最近決心が付いて自転車屋で尋ねると、ストライダーというのは二歳から三歳くらいの子供が乗る物で、四歳は普通の自転車で良いですよと言われてしまった。とはいえ、コマ付きを買っても自宅の周りで練習出来る所が無いので、コマが取れるまでレンタル自転車で練習すると割り切る事にした。子供に自宅で安全に自転車で遊べる環境を与えてやれなくて申し訳ない。

祈り

今年の年末も大阪の実家で過ごした。家に帰るとまず墓参りに行かなくてはならない。前回墓参りをしたのは地震の後で荒れ果てていたが、半年で結構きれいになっていた。いつものようにバケツの水で墓石を洗い花瓶に花を生けコップに水を備える。それから母が手を合わせ孫の前で、

「おじいちゃん、今日は可愛い孫たちが来ました、みんなが元気でありますように。。。」

とか何とか墓に語りかけた。それを聞いた四歳の双子の次女が突然、

「待って待って、私もやる!」

と叫んだ。一体何事だと一同ざわめいたが、

「おおかみさんと楽しく遊べますように、美味しくおかしが食べられますように。〇〇できますように。勝ちますように。」

とか言いながら次女は良くわからない事を祈りだした。実際はもっと日本語にもなっていない不思議な事を祈っていたが、あまりにも意味不明で僕は正確な文言を覚えられなかった。双子の長女も真似をして同じように不思議な祈りを始めた。

意味不明ながらもなぜか空気を読んで孫たちが祈ったという事に、母は大変感銘を受けた。

翌日は元旦だった。おせち料理を前に家族全員が揃った。頂きますをしようという段になり、今度は母は孫たちにお正月の挨拶をさせようと思って、ちょっと大げさに挨拶をしてみせた。しかし、今度は双子はあまりにも腹を空かせていたらしく完全に無視だった。なかなか思い通りには行かないものだ。

それから双子たちは度々お祈りをするようになった。僕が双子を連れてよく行く公園への道にお地蔵さんの祠がある。双子は僕にお賽銭をねだり、コインをチャリンの放り投げてから「良い夢を見ますように」とか不思議な事を祈りだす。

その祠に知らないおばあさんがたまたまお参りにやってきた。双子の祈りを聞いていたらしく「良かったね、良い夢を見られると良いね!」と声をかけて頂いた。双子は大変満足そうだった。